研究実績の概要 |
本研究は炎症性腸疾患における炎症性発癌のメカニズムをエピゲノムの観点から検討し、炎症性発癌同定に有用なマーカーを見出すことにより、現在行われている癌化サーベイランスプログラムより、さらに安全で確実な検出方法を確立することを目的としている。癌合併クローン病は、疾患数が少ない病態であるために、まず炎症性発癌マウスモデルを作成した。これまで炎症性発癌と関連していることが示唆されていたmiRNAについてマウスの大腸組織を用いて解析を行った。 クローン病では直腸肛門で癌が好発することが知られている。癌好発部位である直腸において盲腸よりも有意に発現の低いものとして、miR-9, miR-124, miR-137が同定され、2倍以上の発現差がみられた。また、これらのmiRNAs発現は、neoplasiaの部位でさらに発現が低く、直腸と2倍以上の発現差がみられた。 つまり癌抑制遺伝子であるこれらのmiRNAsのクローン病患者における粘膜発現を定量することで、クローン病における大腸癌診断になりえる可能性が示唆された。そこで、実際に経験した癌合併クローン病患者の癌部、非癌部でのこれらのmiRNAsの発現について検討中である。miRNAの絞り込みを行いtarget miRNAの同定を予定している。さらにこの発現を制御しているDNAメチル化を血中で評価することを次の研究目標としている。以上の結果を国内外の学会で発表し、論文投稿予定である。
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