研究課題/領域番号 |
15K10138
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 傑 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (10362500)
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研究分担者 |
河田 健二 京都大学, 医学研究科, 講師 (90322651)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大腸癌 / KRAS遺伝子 / 糖代謝 |
研究実績の概要 |
本研究ではKRAS遺伝子変異による大腸癌の代謝変化に着目し、1)診断への応用や、2)治療への応用(KRAS遺伝子変異のある大腸癌に特異的な代謝経路をターゲットにした治療法の開発)の可能性について明らかにすることを目的とする。 大腸癌細胞株についてはKRAS遺伝子変異を相同組換え法により野生型に戻した2種類のヒト大腸癌細胞株(HCT116,DLD-1)に加え、siRNA法にてKRAS遺伝子を発現抑制した複数のヒト大腸癌細胞株を樹立した。これらの細胞株における代謝物をメタボロミクス解析にて包括的スクリーニングの結果からKRAS変異に伴い低下するものとしてアスパラギン酸(Asp)に注目した。そこでAspの生成に関与する各種酵素の発現をスクリーニングしてみるとアスパラギン合成酵素(ASNS: Asparagine synthetase)の発現が増加していることを見出した。 KRAS遺伝子変異を有する大腸癌細胞はASNSの発現がKRAS野生型と比較して発現が亢進しており、ASNS発現をノックダウンするとグルタミン濃度依存的にアポトーシスが誘導され、またin vivo(マウスモデル)の実験で腫瘍の増殖が抑制された。さらに、ASNSの発現制御にはPI3K-mTOR経路が関与していることを明らかにし、mTOR阻害剤であるラパマイシンと血清中のアスパラギンを分解する抗がん剤L-Asparaginaseとの併用療法では、in vitro、in vivoいずれの実験においてもKRAS変異型細胞株の腫瘍増殖が有意に抑制された。以上からグルタミン・アスパラギン代謝の阻害はKRAS遺伝子変異を有する大腸癌に対する新規治療ターゲットとして期待できることが示され、論文として発表した(Toda K et al. Neoplasia.18:654-665.2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りにおおむね実験計画が進んでおり、現在までに得られた実験結果を論文発表することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに行なった解析結果を踏まえ、臨床検体から樹立したスフェロイド細胞で検証し、ASNSの抑制が腫瘍増殖抑制に有効であるかを検討していく予定である。 ASNSの抑制が大腸癌治療に有効な可能性が示されたら、実際に臨床応用をめざしたASNS阻害剤の開発に発展させていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の端数が生じた為。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合わせて使用予定である。
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