研究課題/領域番号 |
15K10140
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
植村 守 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (10528483)
|
研究分担者 |
水島 恒和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00527707)
河合 賢二 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (10717599)
波多 豪 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (80749747)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 癌幹細胞 / 低プロテアソーム活性 / 治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
癌治療には癌幹細胞の制御が重要であり、癌幹細胞分離や、癌幹細胞の治療抵抗性機序の解明等が重要である。本研究では、癌幹細胞を従来の表面マーカーのみではなく、癌幹細胞の細胞生物学的特徴に着目し癌幹細胞の分離を試みつつ、治療抵抗性や癌幹細胞性付与に関わる因子及び標的遺伝子を解明し、これを制御することにより、癌幹細胞の産出を抑制し癌の根治につながる新たな治療法を創出することを目標としている。 これまでに、細胞の低プロテアソーム活性を標識するウィルスベクターを用いて、低プロテアソーム活性下細胞を分離することに成功し、この細胞が癌幹細胞性を持つことを明らかにしてきた (Sphere formation亢進、抗がん剤治療抵抗性、放射線治療抵抗性、既知の癌肝細胞マーカーの高発現など)。 さらに、低プロテアソーム活性下細胞が癌肝細胞性を持つにいたった機序を解明するために、低プロテアソーム活性下において発現変化がみられる遺伝子をマイクロアレイ解析によって検索した。その結果、オートファジー関連遺伝子であるAtg9bが低プロテアソーム活性下の大腸癌細胞において発現が亢進していることが示唆された。現在、Atg9bの機能解析や、他の低プロテアソーム活性下において発現が亢進する遺伝子群の機能解析を進めているところである。 今後はさらに、低プロテアソーム活性と癌幹細胞性との関連性を追求し、癌幹細胞における治療抵抗性の機序を探索すること等により、大腸癌幹細胞標的治療の確立を目指していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸癌における癌幹細胞性維持や治療抵抗性(抗癌剤治療、放射線治療)に関して検索していくうちに、低プロテアソーム活性といった因子に加え、低酸素誘導因子にも着眼をするなど、研究の幅が広がったことが当初の計画が遅れた要因である。癌幹細胞性と低酸素誘導因子との関連性は深く、新規の低酸素誘導因子を検索する中で、癌幹細胞性との関連性を示唆するものが得られたが、残念ながら、低プロテアソーム活性と癌幹細胞性とを結びつける低酸素誘導因子の道程には至っていない。これらの実験のために、予定外に時間を消費したが、上記のごとく、新規の低酸素誘導因子と癌幹細胞性との関連性という新規の知見も得られた。 本研究は、主に低プロテアソーム活性下の大腸癌細胞に着目して実験を施行してきたが、低プロテアソーム活性下の大腸癌細胞が幹細性を示す事実は興味深いが、低プロテアソーム活性下の大腸癌細胞は、特異的なベクターを使用して細胞を回収しているものの、その絶対数が少なく、これが低プロテアソーム活性と大腸癌幹細胞性との関連性を追求する実験の大きな支障となった。 また、低プロテアソーム活性下細胞の維持は細胞レベルではG418を用いて可能であるが、動物内では難しいこともあり、動物実験を効率よくできず、データが得られなかったという点も、実験が当初より遅れた原因と考えている。 癌幹細胞実験では、もともと少ない細胞分画の細胞をターゲットに実験を進めるので、大量の細胞を得難いという制約があり、実験が計画通りに進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
低プロテアソーム活性が一定の癌幹細胞性と関連を示すし、また、治療抵抗性とも関連することが明らかになったが、幹細胞性を示すためのKeyとなる実験であるマウスでの造腫瘍性の証明が、低プロテアソーム活性化の細胞の特徴から、難渋しており、条件設定など再検討をしていく予定にしている。また、低プロテアソーム活性下で発現が亢進する遺伝子をmicro arrayを用いて同定しているので、今後は、候補遺伝子の機能解析などを進めつつ、低プロテアソーム活性による幹細胞性付与のメカニズム解明を進めていく予定である。 また、実験を進めていくうえで、低酸素も重要な因子となることが分かってきているので、今回予定している実験に加え、低酸素誘導遺伝子と癌幹細胞性との関連や治療抵抗性との関連に関しても検討を加え、癌幹細胞の治療抵抗性メカニズムの一端を解明すべく幅広く研究を遂行していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の実験計画の通り研究が進捗しなかったことが原因である。特に、動物実験の予備実験段階で、安定した実験系の確立が難しいことが分かり、これに関わる費用が、予定通りに使用されていないことがな原因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、上記の、実験系の確立がうまくいかない部分があり、当該当該部分の実験に関しては、予備実験にとどまっている。今後は、さらに条件検討を加えて、当初の予定通りの実験遂行を目指す。 また、実験系の確立がうまくいかなかった場合に備えて、癌幹細胞細と低酸素誘導遺伝子に関しての実験も進め、この方面からも癌幹細胞細の治療抵抗性メカニズムを解明すべく実験を進めていく予定である。
|