研究課題
ステージ2-3大腸癌の標準治療は手術であるが、根治切除後に10-40%程度で再発が生じるとされ、これを防ぐための術後補助化学療法が行われる。特にステージ3症例は全例に補助療法が推奨されるが、利益を受ける患者はごく少数である一方で、多くの患者にとっては有害事象や医療コストの上昇が不可避である。ステージ2の一部の臨床病理学的高リスク因子を伴う症例には補助療法が勧められるが、その基準はいまだ明確とはいえない。ステージ2-3症例根治手術後の再発リスクや予後を判別する指標の確立とそれによる術後治療の個別化が喫緊の課題である。本研究では1000症例を超える大規模なゲノムデータを、独自のバイオインフォマティクス手法により解析することで、術後の再発リスク、癌死リスクに関連する遺伝子を抽出することを基本とし、種々のアプローチを用いて、複数のデータセットによる再現性を重視し、大腸癌の予後バイオマーカー確立を試みた。特に複数の網羅的遺伝子発現データをオーバーラップさせ、臨床情報、特に再発との関連を検索することで、再現性の高い再発関連遺伝子を抽出し、さらにそれらを独立したデータセットや当研究室で確立した免疫組織染色に適用、応用することで、臨床的に有用と考えられる複数の遺伝子および遺伝子セットを確立した。さらにはゲノム・エピゲノム異常との関連を検索することで、臨床的に重要な新規サブグループを見出した。網羅的な解析と多段階の検証の結果として、癌間質タンパクをコードする遺伝子群や糖鎖構造を制御する糖転移酵素遺伝子群のバイオマーカーとしての重要性と臨床的意義、さらに生物学的機能やそれら遺伝子の制御機構を示唆する研究となった。
すべて 2017
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Oncology Letters
巻: 14 ページ: 5319-5325
10.3892/ol.2017.6876