研究課題/領域番号 |
15K10145
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小山 文一 奈良県立医科大学, 医学部, 病院教授 (40316063)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線性腸炎 / 漢方 / 十全大補湯 / 黄耆 / ミトコンドリア / 抗酸化作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、抗酸化作用を有する黄耆を増量し抗酸化作用を強化した十全大補湯を用いて、ラット放射線性腸炎モデルに対する腸炎発症予防効果、腸炎の治癒促進効果を検討する。特に細胞内ミトコンドリア機能に着目し、抗酸化作用強化十全大補湯が放射線照射による腸管上皮ミトコンドリアの機能障害を緩和させてアポトーシスを予防できるか否かを検討するものである。 平成27年度は、ゲル化剤を用いて、黄耆を増量し抗酸化作用を強化した十全大補湯を含んだラット特殊飼料を作製し、特殊飼料を用いた経口投与法の開発を行った。 平成28年度は、上記飼料で飼育したラットを用いて、ラット細胞内ミトコンドリアの抗酸化作用を検討した。しかし、ラットは特殊飼料の漢方薬成分を残して飼料を食べ分けることが判明した。この結果、特殊飼料飼育群と対象群(通常飼料飼育群)で、腸管上皮ミトコンドリアと肝ミトコンドリアの抗酸化作用に差は認められなかった。この特殊飼料を用いた投与法では、十分量の抗酸化作用強化十全大補湯を投与できないと判断し、放射線性腸炎モデルでの治療実験には進めなかった。そこで、漢方薬の投与経路を特殊飼料による経口投与から直接経口投与法に変更し、ラット細胞ミトコンドリアの抗酸化作用を検討した。直接投与法では、腸管上皮、肝細胞ともにミトコンドリアの抗酸化作用の更新が認められた。 現在、漢方薬直接経口投与にて、ラット放射線性腸炎に対する発症予防効果、腸炎の治癒促進効果の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗酸化作用強化十全大補湯を含ませたラット特殊飼料を作成したが、ラットは漢方薬成分を残して食べ分けることが判明した。特殊飼料で飼育したラットの肝細胞ミトコンドリアと腸管上皮細胞ミトコンドリアの抗酸化作用を検討したが、通常飼料飼育のラットと比較して抗酸化作用の亢進は得られなかった。このため、この特殊飼料を用いたラット放射線腸炎モデルでの治療効果の検討は断念し、ラットに抗酸化作用強化十全大補湯を直接経口投与する実験を行っている。以上の経過から、研究の進捗に遅れが生じています。
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今後の研究の推進方策 |
漢方薬の投与経路は経口投与法のまま変更せず、特殊飼料食投与から直接経口投与法に変更して、ラット放射線性腸炎に対する発症予防効果、腸炎の治癒促進効果を検討する実験を平行して行います。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗酸化作用を増強させた漢方薬を含んだ特殊飼料飼育では、ラット肝細胞と腸管上皮細胞ミトコンドリアの抗酸化作用亢進効果は得られず、放射線性腸炎予防効果は得られないと判断した。このことから、ラット放射線性腸炎に対する治療実験を行わなかったため、次年度使用額が発生しました。
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次年度使用額の使用計画 |
漢方薬の投与方法を特殊飼料による経口投与法から直接経口投与法に変えて、本年度にラット放射線性腸炎治療実験を含む残りの計画実験を行います。
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