研究課題
抗原提示細胞である樹状細胞は複数のサブセットから構成されている。中でもCD8α陽性樹状細胞が、抗腫瘍免疫において、重要な働きをしている。この樹状細胞に特異的に発現するケモカイン受容体XCR1が知られており、そのリガンドXCL1に対し遊走能を持っている。抗原によるT細胞の活性化のために、本研究では、腫瘍抗原ペプチド-XCL1融合タンパク質(XCL1-抗原複合体)を用いて選択的にCD8α陽性樹状細胞(XCR1陽性)に抗原特異的ペプチドをXCR1/XCL1システムを介して送達させ、免疫応答を活性化させることを目的とした。マウスXCL1ケモカインに抗原ペプチドととしてAH-1、または仮想抗原としてよく用いられるOvalbmin由来ペプチド(OVA)を融合させたワクチンの作成を行い、OVA抗原を結合させた複合体で様々な実験に使用できる精製量が得られた。CD8α陽性樹状細胞はToll-like receptor 3(TLR3)を発現しており、癌ワクチンアジュバントとしてTLR3のリガンドのpoly(I:C)を併用した。XCL1-抗原複合体の投与量を0.1μg~20μgまで段階的に設定し、アジュバントとともにマウスに免疫し、脾細胞中の抗原特異的CD8 T細胞(CTL)を抗原特的なIFNγ産生にて検討しところ2μgでCTL誘導活性がplateauに達した。腫瘍モデル実験では、あらかじめXCL1-抗原複合体とアジュバントを腫瘍接種の14日前と7日前に皮下投与した後、OVA抗原を発現する腫瘍細胞株をマウスに接種し腫瘍の増殖を観察した。比較群として、PBS、アジュバント(poly(I:C))のみ、抗原ペプチド+アジュバント投与群と比較し、XCL1-抗原複合体+アジュバント投与群で有意に腫瘍増殖が抑えられた。以上からこのXCL1-抗原複合体ワクチンが癌治療に有用であることが示唆された。
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