H17年からH22年までの術前放射線化学療法を施行したstage II/III進行直腸癌113症例の臨床病理学的解析を行い,pCR率24.1%と術前放射線化学療法の有効性を再確認した.これらの症例で治療前後の末梢血球数をあわせて解析した結果,術前放射線化学療法前の白血球数が多い症例ほど予後が良い結果となった.分画では顆粒球分画が多い症例は予後が良好であり,単球数が多い症例は予後が悪い傾向が認められた.末梢血球数と放射線化学療法の感受性とは明らかな相関はみとめなかった. 骨髄由来抑制細胞を反映するCD33陽性細胞や,腫瘍関連マクロファージ (TAM) であるM2マクロファージを表すCD163陽性細胞等の原発巣への動員を検討した.興味深いことに,治療前腫瘍組織中のCD33陽性細胞数は治療効果や予後と明らかな関連はみとめなかったが,CD163陽性細胞数が多い群では有意にCR率が低かった.同様にCD163陽性細胞数が多い群で有意に悪性予後を示していた. 一方,手術検体ではCD33,CD163陽性細胞ともに無再発生存率(RFS)に関連していた. また,放射線療法感受性に関わる分子を同定するため,ヒト大腸癌細胞株において感受性株と抵抗性株の遺伝子発現プロファイルを調べ候補遺伝子を抽出した.放射線照射によって感受性株で誘導される遺伝子発現としてcellular retinol binding protein 1 (CRBP1) が同定された.CRBP1発現はプロモーターメチル化によって制御されており,臨床検体においてもCRBP1高メチル化は有意に術前放射線化学療法奏効率が低かった.
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