研究課題
平成28年度は血漿エクソソーム内包microRNAに注目し、大腸癌早期診断、再発予測診断および予後予測診断マーカーとしての有用性を検討した。血漿エクソソームは超遠心法で分離し、RNAは miRNeasy Serum/Plasma Kitを用いて抽出した。microRNAの測定は、TaqMan microRNA assayで行ない、外部標準としてCel-miR-39、内部標準にmiR-16を用いた。microRNAのプロファイリングはmiRNA Arrayで検討した。まず、再発症例に特異的なmicroRNAを明らかにするため、大腸癌再発症例、治癒症例、健常人の血漿エクソソームのmiroRNA発現パターンをmiroRNAアレイで比較検討し、再発群で高発現を認めたmicroRNA-21(miR-21)とmicroRNA-X(miR-X)を選出した。次に、これらのmicroRNAの早期診断および再発予測診断マーカーとしての有用性を、大腸癌326例を対象に癌の病期別に明らかにした。血漿エクソソームmiR-21およびmiR-Xは、大腸癌の進行により有意に上昇した。さらに、腫瘍組織と血漿エクソソームmicroRNA発現の間に有意な正の相関を認めた。病理因子との関連性において、エクソソームmiR-21とmiR-Xは肝転移および病理病期と有意な関連性を示した。生存曲線解析において、エクソソームmiR-21とmiR-X高発現群の全生存率および無再発生存率は、低発現群に比較し有意に低下した。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析において、エクソソームmiR-21とmiR-Xは全生存および無再発生存に対して有意差を示した。大腸癌の病期別に解析したところ、TNM stage II、IIIおよびIVにおいて、エクソソームmiR-21とmiR-X高値群は低値群に比べ、全生存率および無再発生存率が有意に低かった。病期別にCox多変量解析を行ったところ、血漿エクソソームmiR-21およびmiR-Xは独立した予後因子であることが明らかとなった。これらの結果から、エクソソームmiR-21およびmiR-Xは、大腸癌の各病期で有用な再発および予後予測因子であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、大腸癌再発予測診断に有用な、血漿エクソソーム内包microRNAを明らかにし、大腸癌の再発予測および予後予測マーカーとしての有用性を明らかにすることであった。まず、microRNAアレイを用いて、大腸癌再発症例、治癒症例および健常人のmicrRNAのプロファイリングを詳細に検討た。その結果、これらの大腸癌の早期診断および再発予測診断マーカーとして期待しうるmiR-21とmiR-Xを抽出した。次にvalidation setとして大腸癌326例を対象に、これらのマーカーの再発および予後予測マーカーとしての有用性を検討した。その結果、血漿エクソソーム由来miR-21およびmiR-Xは、いずれも大腸癌組織での発現を反映しており、癌の進行度によって有意に上昇しているが明らかとなった。さらに大腸癌の病期別による解析でも、再発および予後予測診断として有用であることが判明した。このように、本年度の研究の進捗状態は、本来の目的を十分に達成しているものと考える。
今後は、今回選出したmicroRNAの治療への応用を考え、ナノパーテイクルなどを用いたドラッグデリバリーシステムを用いて、その有用性を明らかにする。さらに、Liquid biopsyとして注目されている cell-free DNAの早期大腸癌のマーカーおよび転移・再発・予後予測マーカーとしての意義を検討する。加えて、化学療法剤と分子標的薬治療効果判定マーカーとしての有用性についても検討する。また、新たな大腸癌症例のサンプリングも継続しておこなう。このような癌に対するLiquid biopsyに基づくバイオマーカーの特色、利点および課題を明らかにすることで、臨床の場により即した診断法の確立を目指す。
microRNA抽出用の試薬が、まとめ買いにより予定より安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。
臨床サンプル保存のための試薬代として使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 13件、 謝辞記載あり 13件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件)
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