研究課題
平成29年度は、一酸化炭素と酸素の混合ガスを用いた高圧ガス保存法を用いて、内腔からガスをアプローチできる臓器としてラット・イヌ小腸、さらにラット・イヌ肺の保存を試みた。昨年度、7日間高圧ガス保存したラット小腸において摘出直後の小腸と変わらない収縮が確認できた。今年度は、ラット小腸の粘膜を標的に実験を行なったが、粘膜上皮は、虚血に敏感かつ代謝が盛んな部位であり、評価が安定しなかった。そこで、上皮として比較的脆弱な肺胞上皮を標的に保存を行なった。具体的内容;ラット小腸を高圧ガス保存法にて24時間保存し、移植から90分後に組織学的評価を行なった。保存小腸は、比較的粘膜の形態は保たれていたが、部分的に剥離が見られ、評価の安定性を欠いた。ラット肺は、摘出後に肺の内腔へ保存ガスを換気し、高圧ガス保存で24時間保存した。移植から90分後の評価では、換気した群は、しなかった群と比較し、浮腫と肺胞内出血を抑え、Real-Time RT-PCRの結果では、TNF、IL-6、IL-1β、iNOSの発現を有意に抑えることがわかった。さらに、イヌ肺を同様の方法で保存し、移植から3時間までの血液ガスを比較した。換気した群は、PaO2、PaCO2、Lactate、PIPを正常値に保ち、状態は良好であった。一方で、換気しなかった群は、移植1時間までのLactateと3時間後のPaCO2が高値を示した。意義・重要性;ラット・イヌ肺の結果では、ガスを内腔から曝露し、高圧ガス保存法で保存することで、より肺の機能を保ち、保存効果が上がることが分かった。内腔へガスを換気することで、臓器の大きさに関わらず、虚血再灌流障害を軽減することが確認され、一酸化炭素と酸素の混合ガスを用いた高圧ガス保存法が、ヒトの臓器へ応用可能であることを示唆した。今後、粘膜をより安定して保存できる方法を確立していく予定である。
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