研究課題
本研究では大腸がん及び肝転移症例(外科切除症例)よりDNA及びRNAを抽出し、450Kメチル化アレイ・RNAシークエンサーを用いてCpGアイランドを含むプロモーター解析データ、及び包括的発現解析データより異なる種類のデータについてiClusterによる統合解析を行った。発現クラスターでは主に肝転移によると考えられる生命予後を反映するものであり、さらにメチル化の程度により大腸がん患者の層別化が可能であることが示された。これまでに450Kアレイのデータの処理については各遺伝子の上流に位置する多数のプローブをどのように数値化するかが困難であり、バイオインフォマティクスにおけるボトルネックとなっていたが、本研究では各CpG配列の変化する位置からCpG coreと名付けた領域を同定することにより、このデータを用いて統合解析が可能となっている。具体的にはCpG coreのメチル化データと発現データによるクラスタリングにより予後良好な患者群と不良群を層別化することが可能であった。さらにネットワーク解析により発現解析あるいはメチル化解析といった、1種類の解析データのみでは得られない、がん化、がん進展に関与する責任遺伝子を同定可能であることを示した。このネットワーク解析によりPTX3という遺伝子が高メチル化されることにより大腸がん肝転移における責任遺伝子の一つとなっている可能性が示された。以上の解析方法は大腸がんだけでなく他がん種の発がんメカニズムの解明にも応用可能であり、また、本研究で得られたデータを他のpublic dataで実証することにより今後のがん研究の発展に寄与できるものと考えられる。
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