研究課題/領域番号 |
15K10154
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山野 智基 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00599318)
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研究分担者 |
冨田 尚裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00252643)
久保 秀司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10441320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 家族性大腸腺腫症 / デスモイド |
研究実績の概要 |
研究を行うにあたって患者サンプル(血液、手術・内視鏡検査で採取した組織)を用いるため、兵庫医科大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理専門小委員会に申請し、承認を得た。課題名は「家族性大腸腺腫症患者における分子マーカー探索と新規治療法開発」(倫ヒ288号)である。 現在大腸全摘を行う家族性大腸腺腫症(FAP)患者、外来フォロー中のFAP患者から血液あるいは手術標本から大腸組織を採取している。現在までに以前に大腸全摘を行った患者3名(内2名はデスモイド合併)、大腸切除未のデスモイド合併患者1名、大腸全摘前後で血液を採取した1名、大腸全摘前に血液を採取した1名の計6名から血漿を採取出来ている。その他にFAP患者では無いが、小腸間膜に出来たデスモイド腫瘍のサンプルを採取出来ている。このデスモイド腫瘍をヌードマウスに移植し、当初は生着したかに思えたがその後腫瘍は次第に小さくなり消失した。これはデスモイド自体に増殖能が無いことを示す(病理学的に良性腫瘍)と共に、外的刺激(微小環境)あるいは免疫がデスモイド腫瘍の増殖に関係していることを示している。 また基礎研究を行うと共に、これまでの当科でのFAP患者の臨床データを報告している。 日本家族性腫瘍学会、日本消化器外科学会ではFAP患者226例のうち25例(11%)に合併し、ドキソルビシン/ダカルバジン併用化学療法(ドキソルビシン20mg/m2(day1-4)、ダカルバジン150mg/m2(day1-4)を4週毎投与)を施行した症例は6例であるが、化学療法の効果はCR3例、PR3例と良好で、胃癌合併による死亡例以外は無増悪生存中である。 更に症例報告ではあるが、巨大デスモイド腫瘍に対してMohs pasteと言われる皮膚科で主に用いられる外用剤が有効であることを論文にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
家族性大腸腺腫症患者のサンプルが十分集まっていないため、解析が行えていない。 2015年度の大腸全摘患者の数が少なかったこと、および外来フォロー中の患者は研究代表者以外の医師(研究分担者を含む)が数多く担当しているが同意取得が進んでいない(外来受診時に研究に対する説明が行われていない)。更に患者のフォローが半年あるいは1年に1回であることや、居住地が遠隔地であることからサンプル集めが進んでいない。 またオルガノイド培養については培養法の開発者に見学依頼を行ったものの、多忙であることからプロトコールのみ頂いた状態であり進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
1.サンプル数を増やすための方策 ①サンプル数を増やすために当院通院中のFAP患者リストを作成し、受診に合わせて同意書、サンプルを採取する様に徹底する。②患者リストを元に、患者に説明文・同意書を郵送し研究への協力を依頼する。③学会発表を行うことで研究を医療関係者・患者に知ってもらう。 2.マイクロRNA解析の実施 現在FAPで大腸全摘前後の血漿があるサンプルが1例しか無いため、大腸全摘による変化(大腸ポリープの有無による変化)を調べるには不十分である。半年以内には3例まで増える予定であるので、3例もしくは5例で解析を行う。また術後の患者ではデスモイドのある患者と無い患者がいるので術後の患者も全部で10例集まれば解析を行う。 3.オルガノイド培養の実施: FAP患者でのオルガノイド培養を行う前に、FAP以外の患者でのオルガノイド培養を行い手技を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
FAP患者の病態を示すバイオマーカーを探すのが、本研究の主題の一つであるが現在6名の患者からしかサンプルを採取出来ていない状況である。そのためマイクロRNA抽出後のアレイ解析が進んでおらず次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年中には手術前後のサンプルで3例以上、術後の患者で10例以上のサンプルを集めることが可能なため次年度繰越額はマイクロRNAのアレイ解析に主として用いられる予定である。
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