研究課題
下部進行直腸癌に対しては術前放射線化学療法(CRT)が標準治療として施行されているが、その効果を予測することは現時点では困難である。術前CRTの効果を予測することができれば、不必要な術前CRTの省略や、より強力な術前全身化学療法と組み合わせるなどの戦略をとることが可能になる。本研究ではCRT施行前の生検癌組織の全エクソンシークエンスを行い、CRT耐性に関わる遺伝子変異を効果良好群(Dworak Tumor Regression Grade (TRG)3あるいは4)と効果不良群(TRG1)で比較検討した。74例の全エクソンシークエンスを施行した。74例のうち5例のhypermutatorを認め、これら5例は全例効果良好群であった。Hypermutators 5例を除く69例において、効果良好群では効果不良群に比べSingle nucleotide variants (SNVs)の数(P=0.0099)とInsertion/deletion(Indels)(P=0.0211)の数が有意に多かった。CRTの効果と相関する特定のドライバー遺伝子変異やコピー数異常は検出できなかった。Hypoermutaor 5例を含む74例においてSNVから予測されるネオ抗原数を算出すると、効果良好群で効果不良群において有意に予測ネオ抗原数が多かった(P=0.0427)。生検検体のCD8陽性腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)を解析すると、効果良好群で効果不良群に比べCD8+ TILの密度が有意に高く、SNVs/Indelsの総数とTIL密度は有意な相関が認められた。以上の結果、CRTの効果はCRT施行前の腫瘍のmutation burdenと、変異によって生じたネオ抗原を認識するTILによって規定されていることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件)
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