研究課題/領域番号 |
15K10158
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田島 秀浩 金沢大学, 大学病院, 講師 (00436825)
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研究分担者 |
宮下 知治 金沢大学, 医学系, 助教 (30397210)
太田 哲生 金沢大学, 医学系, 教授 (40194170)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝類同閉塞症候群 / 血小板 / 好中球 / 抗癌剤 |
研究実績の概要 |
肝類洞閉塞症候群(SOS)は薬剤暴露後などに生じる肝の重篤な障害で原因は不明である。また、オキサリプラチンに代表される抗癌剤治療に伴って出現する肝障害や造血幹細胞移植後に生じる重篤な肝障害もSOSであるが、これらは脾腫などの門脈圧亢進症状や血小板の低下を呈しながら慢性に進行する中心静脈域(zone 3)を中心とした肝障害であるという共通の特徴を有している。血小板の低下は門脈圧亢進症による脾機能亢進症に伴う結果的なものと考えられているが、オキサリプラチンによる化学療法を行っている症例の検討では比較的早期から血小板の低下が認められている。タクロリムスに代表される免疫抑制剤やオキサリプラチンに代表される抗癌剤により門脈や類洞の血管内皮は障害を受け、ここから類洞やDisse腔に血小板が侵入して容易にDisse腔内で凝集を生じるはずである。類洞内に存在しているはずの血小板が肝細胞と接触して存在していたという事実は血小板がDisse腔に侵入したことを示していることにほかならない。また血小板から分泌されるthromboxane-A2 、TGF-β、VEGF-A、PAI-1などの作用により中心静脈は収縮を生じて類洞内圧および門脈圧の上昇を生じるとともに、zone 3を中心とした線維化が促進されてDisse腔における物質交換も障害を受け、肝再生も障害を受ける。これがSOSの病態であり、血清ビリルビン値の上昇、門脈圧亢進症状やICG排泄遅延を生じて重症例では肝不全に至る病態を一元的に説明することが可能である。 今回の研究ではラットにおける薬剤性SOS肝障害モデルを用いて血小板の関与を検討することを目的とする。そして肝における血小板の凝集と障害の状態を検索し、電子顕微鏡を用いて血小板の局在を証明して仮説の立証を行う。また、抗血小板薬を用いてモデルにおけるSOSが抑制あるいは予防されるか否かを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスSOSモデルを作成して末梢血における血小板数、好中球数、肝酵素(GOT、GPT)、炎症性サイトカイン(IL-2、6、TNF-α)、ヒアルロン酸、血小板より分泌されるTXA2、TGF-β、VEGF-A、PAI-1、好中球の破壊によって生じるHMGB1濃度を測定し、溶媒のみを投与したコントロールのラットの血液検査所見と比較検討を行いました。抗血小板などを用いたSOS抑制についても検討する予定でしたが、検討項目が多いため予定よりやや遅れています。平成27年度の業績としては予備実験として行った免疫組織学的検討を論文化しました。論文 1)Tajima H et al.: Oxaliplatin-based chemotherapy induces extravasated platelet aggregation in the liver. Mol Clin Oncol 3: 555-558, 2015. DOI: 10.3892/mco.2015.512 2)Nakanuma S et al.: Extravasated Platelet Aggregation in Liver Zone 3 Is Associated With Thrombocytopenia and Deterioration of Graft Function After Living-Donor Liver Transplant. Exp Clin Transplant 6: 556-562, 2015. DOI: 10.6002/ect.2015.0063 3)Nakanuma S et al. Extravasated platelet aggregation in liver zone 3 may correlate with the progression of sinusoidal obstruction syndrome following living donor liver transplantation: A case report. Exp Therap Med 9: 1119-1124, 2015. DOI: 10.3892/etm.2015.2245
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今後の研究の推進方策 |
次年度はモノクロタリンによるラットSOSモデルを用いて抗血小板薬として臨床で用いられているバイアスピリンおよびシロスタゾール、好中球エラスターゼ阻害剤であるシベレスタットナトリウムをあらかじめ投与しておくことにより末梢血における血小板数、好中球数、肝酵素(GOT、GPT)、炎症性サイトカイン(IL-2、6、TNF-α)、ヒアルロン酸、血小板より分泌されるTXA2、TGF-β、VEGF-A、PAI-1、好中球の破壊によって生じるHMGB1濃度を測定し、モノクロタリンにより肝障害を惹起したラットの血液検査所見と比較してSOSが予防あるいは軽減されるかを検討いたします。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費の削減と節約により研究経費がやや低めに抑えられました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は薬剤を使用する実験が多く含まれており、使用額が増加するため、当該経費に充当する予定です。
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