macrophage-colony stimulating factor(M-CSF)はマクロファージの成熟・分化・増殖に関与し、組織での発現は肝臓で強い。最近の報告で、ヒト肝細胞癌において、M-CSFの非腫瘍部における発現と、発癌との関連が報告されている(J. Clin. Oncol. 2008; 26:2707-2716)。しかし、その機序の詳細は未だ解明されていない。また、M-CSFによるマクロァージのVEGF産生増加と血管内皮細胞の増殖亢進の報告もある(J. Immunol. 2003;171:2637-2643)。さらに、実際、最近の申請者らの検討においてジエチルニトロサミン(DEN)誘発発癌モデルにおいて、M-CSF欠損マウス(op/op mouse)群では、wild-type mouseと比較し発癌率が有意に減少していた(Hara and Kono et al. Hepatology Research 2013)。 これらの結果は、背景肝に発現するM-CSFにより分化した肝マクロファージが産生する炎症性サイトカインならびにVEGFなどの血管新生因子が肝細胞癌の増殖を促進させている可能性を強く示唆していると考えられる。 本研究の目的は、M-CSF欠損マウスに肝発癌モデルを作製し、M-CSFの肝発癌における役割を、腫瘍関連マクロファージ、血管新生発現の点より検討する。また当科における肝切除標本を用い、非腫瘍部でのM-CSF発現と、M2マクロファージ分布、新生血管を検討し、臨床ならびに病理組織学的因子とこれらの発現を統計解析しM-CSFの肝発癌における役割を、基礎的ならびに臨床的に解明する。さらに、M-CSF受容体阻害剤を用いて、肝細胞癌肝転移モデルにおける転移抑制効果を検討する。
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