研究課題
本研究では、現在までに施行してきた約500例の既存治療無効進行肝癌に対する治療経験とこれらの肝切除標本を含む臨床検体をもとに、この既存治療無効病巣の生物学的特性を、“上皮間葉系形質転換”と癌幹細胞に特異的な“階層的複製能”の点より明らかにする。この着目点については、肝細胞癌の既存治療抵抗性病巣が、RFAやTACEなどの反復局所治療の結果、出現することによる。つまり、これら既存治療は壊死効果により抗腫瘍効果を得るため低酸素状況を作りだし、そのことが一部の癌細胞の形質転換を誘発しそのため癌幹細胞様の治療抵抗性癌細胞の出現を助長し、最終的に抵抗性を獲得する可能性が高い。現在までにわれわれは、癌細胞の形質転換と癌幹細胞様の階層的複製能についての基礎的研究をすでに幹細胞癌で進行中であり、特に既存治療抵抗性病巣の特徴を、“上皮間葉系形質転換”との関係より解明しつつある。
2: おおむね順調に進展している
既存治療抵抗性肝癌については、従来のTACE、RFAなどの肝癌局所療法を反復施行することにより、低酸素状況を誘発することが知られている。さらに、既存治療抵抗性病巣の典型例である門脈内腫瘍栓切除症例の臨床検体を対象として、低酸素状況については、上皮間葉系形質転換誘発との関係について、E-CAD、N-CAD、VIMENTIN、SNAIL、FIBRINECTINなどの種々の上皮・間葉系マーカーの発現について明らかにした。加えて、癌幹細胞マーカーであるCD13の発言との関係についても明らかにした。
既存治療抵抗性肝癌の臨床検体を用いた癌幹細胞に関する検討上記①において、低酸素状況より誘発される上皮間葉系形質転換を示した癌細胞は、他の消化器癌においては、癌幹細胞に特有の階層的複製能を有すると考えられている。この点について、肝細胞癌においても、既存治療抵抗性病巣における癌幹細胞様の変化について、CD13、などの肝癌特異的な癌幹細胞マーカーの発現について確認したことより、今後癌幹細胞との関連について、さらに検討する。肝癌不応答株を用いた獲得耐性に関する検討現在までに、肝癌細胞株を用いたIFN不応答株を作成してきた。同様の手法を用いて、5FU、CDDP、ソラフェニブに対する不応答株を順次作成し、クローニングする。これらの不応答株は、先述した既存治療抵抗性肝癌に治療に対する治療として次に考えられる抗悪性腫瘍剤治療については、薬剤不応答性の機序について検討する必要がある。まず、これらの不応答株について親株を対象とし、トランスクリプトーム、miRNAの両方より、オミクス解析を行い、これら不応答性に関与する遺伝子とmiRNAについて探索するとともに、現在の勤務地である山口大学消化器・腫瘍外科学講座にすでに設置されている次世代シークエンサーを用いた解析に着手する。
本年度の実験のおいて、細胞培養のための、培地シャーレ、培地の購入費を計上していたが研究が順調に進んだことにより、予定より低額に抑えられたため、未使用額が生じた。
未使用額については、平成29年度の学会への旅費、参加費、打ち合わせ等に係る旅費と併せて使用する。
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