研究実績の概要 |
本研究は、肝再生における必須サイトカイン経路(IL-6、HGF、EGFR)に関してnegative/ positive challengeを行い、得られた再生肝における細胞内シグナル伝達機構を解析し、肝再生制御機構を解明することを目標とした。 マウス70%肝切除モデル手技を安定させるため、C57BL/6Jマウスを用意し70%肝切除モデルを完成させた。サイトカイン経路(IL-6、HGF)を選択的に遮断するため、HGFに対しては、分子標的薬(選択的MET阻害剤、PHA-665752)、IL-6に対しては、抗マウスIL-6R モノクローナル抗体(ラット)(MR16-1)を用意し、マウスに投与した。マウス70%肝切除モデル、肝切除後24時間および48時間の残肝の再生能を比較した。 対照群では残肝重量/体重比が0.0292±0.0019 (n=13 48時間)であったのに対し、MR16-1投与群、PHA-665752投与群では統計学的には差を認めなかったが、MR16-1とPHA-665752を両方投与した2剤投与群では、0.0261±0.0028であり、対照群に比べ有意に残肝重量の増加が抑制された(p=0.028)。また、シグナル伝達の活性化を評価するため、切除肝組織を用いてリン酸化アレイ(Raybiotech Life, GA, USA)(AKT、JAK/STAT、MAPK、PI3K-AKT、Wnt/beta-Catenin)を行った。その結果、特徴的な2分子を同定した。分子2(M2)は、AKTシグナルのさらに下流に存在するが、この分子はMR-16およびPHA投与マウスそれぞれで軽度の活性化抑制が起こり、2剤投与群では相乗効果的に活性化抑制がみられた。双方のシグナル伝達経路で共通した分子となっており、肝再生におけるRegulation moleculeである可能性が示唆された。 本研究で、IL-6、HGFの両方を抑制した肝再生モデルでは、対照群に比べ優位に肝再生を抑制し、シグナル伝達経路の解析から、特徴的ないくつかの分子が同定された。特にM2は、肝再生制御における重要な役割を果たしている可能性が有り、今後の発展的研究が期待される。
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