研究課題/領域番号 |
15K10164
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
武部 敦志 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (00444597)
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研究分担者 |
木戸 正浩 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00403246)
具 英成 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40195615)
福本 巧 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70379402)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝悪性腫瘍 / 経皮的肝灌流化学療法(PIHP) / 白金製剤 |
研究実績の概要 |
肝動脈への抗癌剤注入と分離肝灌流を組み合わせた我々のシステム(経皮的肝灌流化学療法)は、高度進行肝悪性腫瘍に対する高濃度抗癌剤の肝限局投与を実現した。これはすでに臨床応用されており、その腫瘍制御能は国内外で高く評価されている。一方、本システムで使用可能な抗癌剤はわずか2剤にとどまっているのが現状で、特に肝腫瘍を含めた固形癌に対するkey drugである白金製剤の薬剤除去効率は低く、致死的な副作用を回避することができなかった。 本研究で、我々は白金製剤の除去効率の高率化を目的とし、大型動物(ビーグル犬)を用いた動注モデルを確立した。また、白金製剤の薬剤動態の解析結果をもとにシステムの改良を行い、薬剤除去率を高率に維持することが可能であることを明らかにした。さらにこの改良型動注システムを用いて、白金製剤による致死的な腎障害を回避できることも同時に示すことができた。これらの結果より我々のシステムは進行肝細胞癌のみでなく転移性肝腫瘍や肝内胆管癌などの切除不能肝腫瘍に対して、高い治療効果が望める新しい治療オプションとなり得ることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に予定された実験計画に沿って、抗癌剤肝動注動物モデル(ビーグル犬)を確立し白金製剤(シスプラチン)の高濃度投与実験をおこなった。以前におこなった基礎実験の結果に基づいて、薬剤吸着筒を並行設置した改良システムを用いると、薬剤除去システムを組み込んだ実験動物では明らかな有害事象が発生しなかったが、システムを組み込まなかった実験動物では、抗癌剤投与後7日以内に全頭で致死的な腎機能障害が発生した。一方、両群において抗癌剤投与後7日目での肝内残存薬物量は同じであった。 新規吸着剤の開発実験では、企業より無償提供をうけた試作血液濾過膜を用いてin vitroでの薬剤吸着実験をおこなったが、既存の活性炭吸着より薬剤除去効率が高いものは見出すことはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
既存のシステムの改良により、白金製剤の肝限局大量投与が可能であることが明らかになった。本年度は、薬剤除去法を従来通りの血液濾過方式に絞って、システムのさらなる改良を目指す。昨年度の研究結果より市販の活性炭吸着筒の容量制限が、白金製剤除去効率が低い理由であることが明らかであり、他の血液濾過膜も用いて薬剤除去実験を継続する。また臨床応用に向けて、昨年度におこなった周術期(-7日間)の観察実験のみでなく、我々のシステムによって中長期の白金製剤よる有害事象を軽減することができるか、長期飼育により確認する。さらに実験計画どおり、マウスなどの小動物肝腫瘍モデルを用いて高濃度白金製剤投与における、腫瘍内白金濃度の計測をおこなう。
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