研究課題/領域番号 |
15K10165
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
田代 裕尊 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (90359894)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 肝星細胞 / 脂肪肝 / 肝細胞癌 / アンチトロンビン |
研究実績の概要 |
肝星細胞を標的とした肝細胞癌に対する新規治療法の開発
脂肪肝ラットを作製し、肝星細胞を分離し、肝細胞癌との共培養により肝細胞癌の増殖・浸潤能に与える影響について正常肝由来の肝星細胞と比較検討した。まずCXCL2のリセプター抗体(CXCR2抗体)を用いて、腫瘍の増殖・運動を検討すると、CXCR2抗体により癌細胞の増殖能および運動能は抑制されなかった。次に、抗インテグリン抗体を用い、ラットヌードマウスでの共移植実験においても、がん細胞の増殖は抑制されなかった。そこで、新たにアンチトロンビンが肝星細胞の活性化を抑制したことにに着目し、実験を進めた。 まず、AT低値マウス(ATIII活性値約60%)及び、B6wild typeマウス(ATII活性値約120%)を用い、生後6週目に、Diethylnitrosamine(DEN)を10㎎/㎏、8週目より2週間間隔で60週まで四塩化炭素 (CCl4)を0.5ml/㎏を腹腔内投与し、肝発癌について検討した。56週で犠牲死させるとATIII低値マウス群(5/6)は、肝腫瘍の発生を認めたが、wild type(0/6)において肝腫瘍は認めなかった。60週では、wild type(5/7)に肝腫瘍を認めたが、肝腫瘍径と腫瘍個数および肝重量は有意にATIII低値マウス(8/8)において高値であった。肝組織においてはATIII低値マウス群でTUNEL陽性細胞、Cleaved caspase-3陽性細胞、8-OHdG陽性細胞はそれぞれ有意に増加していた。さらに60週でも同様にATIII低値マウス群でTUNEL陽性細胞、Cleaved caspase-3陽性細胞、8-OHdG陽性細胞、Ki-67indexはそれぞれ有意に増加し、ELISA法による8-OhdG値もまた有意にATIII低値マウスにおいて高値であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪性肝炎に伴い活性化される肝星細胞はcancer-associated fibroblast(CAF)として癌微小環境の中で肝細胞癌の増殖・浸潤能を亢進させ癌進展に寄与している事も明らかになりつつある。本研究では、脂肪肝由来の肝星細胞が癌細胞の進展を促進することが示された。肝星細胞の活性化の制御法として、インテグリン抗体その他で検討したが、十分な抑制が得られず、アンチトロンビンに着目し検討すると、肝癌発癌では、アンチトロンビンが肝癌発癌に関与する事が明らかになった。当初の計画からは、方向が違ってきたが、本年度では昨年度の遅れを取り戻せ順調に実験は進展し、肝細胞癌制御法として新たな方策になりうる可能性が示唆された。今後、さらに検討する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、肝転移モデルや、アンチとロビンが癌微小環境におよぼす影響について検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね、物品費を計画ように使用できたが、9657円と若干残った。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度には、計画のように使用する予定である。
|