研究実績の概要 |
昨年まで、AT低値マウスにおいては、DEN誘導肝腫瘍がワイルドマウスより形成されやすい事を報告した。本年度ではAT活性低値(AT+/-; AT活性約60%)マウスを用いて、肝癌転移モデルを作製し、がん微小環境と癌の進展について検討した。AT+/-マウスとワイルド(AT+/+; AT活性約120%)マウスを用いてHepa1-6(B6マウス肝細胞癌)を脾臓内注射し、術前後にasialoGM1抗体を腹腔内投与(i.p.)し肝癌転移モデルを作成した。AT+/-マウスには、AT(500IU/kg, i.p., 2回/週)を投与した群を作成し、3群間で腫瘍の生着を比較した。AT+/-マウスはAT+/+マウスと比較し腫瘍個数、肝重量ともに有意に多く、AT3投与にて癌の生着は有意に抑制された(P<0.05、P<0.05)。またAT+/-マウスにおいては、腫瘍周囲への好中球の浸潤が亢進していた。さらにヒト全血から分離した好中球をLipopolysaccharide (1μg/ml)で刺激するとIL-8の放出は有意に亢進し、AT(10IU/ml)を投与することでその放出量は有意に抑制された(P<0.01、P<0.01)。また好中球と肝癌細胞を共培養すると、癌細胞の増殖、遊走能は有意に亢進し、ATにより抑制された(P<0.01、P<0.01)。ATは好中球抑制などの抗炎症作用を介してがん微小環境を改善し肝癌進展を抑制する可能性が示唆された。
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