研究課題
肝細胞がん根治切除後の転移再発を予防する方法は未確立であり、転移再発の機序解明と、それに基づいた補助療法の開発が急務である。本研究の目的は、肝細胞がん特異的な循環腫瘍細胞 (Circulating Tumor Cell; CTC) の検出法を確立し、肝細胞がんの転移再発を正確に予見するシステムを構築すること、免疫系遺伝子多型解析に基づいて、循環腫瘍細胞の制御法を開発することである。肝細胞癌特異的な細胞表面マーカーであるGlypican-3(GPC3)を標的に、抗GPC3抗体と抗マウスIgG磁気ビーズを用いた磁気細胞分離システムを構築する。得られたCTCが癌由来のものであることを免疫染色法で確認する。肝細胞癌切除例の血液からCTCを検出し、臨床病理学的な解析を行う。肝細胞癌細胞株HepG2をヒト血液に混入したサンプルから検出されたGCP-positive CTCは、サイトケラチン陽性、CD45陰性、CD235陰性であり、血中に循環する上皮系細胞であることが確認された。肝細胞癌患者と健常人から検出された細胞数から3個以上をCTC陽性とし、肝細胞癌の検出感度69%、特異度84%であった。肝細胞癌初回切除例62例の検討から、CTC陽性43例、平均CTC数5.3個が検出され、CTC陽性は病理学的脈管侵襲陽性と有意な相関を認めた。多変量解析の結果から、CTC陽性、AFP高値、PIVKAII高値が独立した病理学的脈管侵襲陽性の予測因子であった。
2: おおむね順調に進展している
肝細胞癌特異的なCTC検出法により病理学的脈管侵襲が予測可能であることが明らかになった。得られたCTCを免疫不全マウスに皮下投与したが、腫瘍形成は観察できなかった。
CTCの免疫回避機構を明らかにするために、GCP-positive CTCのphenotype解析を行う。具体的には、NK細胞の活性化受容体のリガンドであるMICA、MICB、DR1, DR2, DR4, DR5、抑制性受容体のリガンドであるHLA、MHCのsubtype発現、そしてCD47-SIRPαシグナルのリガンドであるCD47を評価する。また、個体の免疫学的遺伝子多型解析、及び抗GPC3抗体存在下にNK細胞、マクロファージとの混合培養試験を行い、NK細胞療法をはじめとする免疫療法によるCTCs制御の可能性を探求する。
抗体購入にあたり差額が生じたため
次年度の抗体購入費に充てる
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