研究課題/領域番号 |
15K10166
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小林 剛 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 特任講師 (50528007)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 循環腫瘍細胞 / 転移 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝細胞がん特異的な循環腫瘍細胞 (Circulating Tumor Cell; CTC) の検出法を確立し、肝細胞がんの転移再発を正確に予見するシステムを構築すること、免疫系遺伝子多型解析に基づいて、循環腫瘍細胞の制御法を開発することである。 肝細胞癌で特異的に高発現しているGlypican3(GPC3)に着目し、磁気細胞分離システムをもちいたCTC検出法を構築した。全血から密度勾配遠心沈殿法後に抗GPC3モノクローナル抗体および磁気ビーズを用いてpositive selectionによりGPC3陽性細胞を回収し、フローサイトメトリーで解析した。肝細胞癌細胞株HepG2をヒト血液に混入したサンプルから検出されたGCP-positive CTCは、サイトケラチン陽性、CD45陰性、CD235陰性であり、上皮系細胞であることが確認された。肝細胞癌患者と健常人および慢性肝疾患、転移性肝癌患者から検出されたGCP-positive 細胞数から、ROC解析により3個以上をCTC陽性とした。 2015年4月から2016年8月までに肝細胞癌に対して初回肝切除を行った85症例において、末梢血からGCP-positive細胞の検出を行い、臨床病理学的因子との関連を検討した。52例(61%)の患者がCTC陽性であり、陽性群は陰性群に比べ有意に腫瘍径が大きく(p=0.038)、被膜浸潤症例が多く(p<0.001)、門脈侵襲陽性例が多かった(p=0.001)。多変量解析ではCTC 3個以上、AFP60 ng/ml以上、AFP-L3分画10%以上が独立した門脈侵襲予測因子であった。これらの因子を用いるとAUC0.83と効率的に門脈侵襲を予測可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討から、肝細胞癌特異的なCTC検出法により病理学的脈管侵襲が予測可能であることが明らかになった。得られたGCP-positive細胞が原発肝腫瘍に由来するものかどうか、GCP-positive細胞と原発腫瘍細胞の遺伝子変異検出を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
得られたGCP-positive細胞が原発肝腫瘍に由来するものかどうか、遺伝子変異の相同性を評価する。 CTCの免疫回避機構を明らかにするために、GCP-positive CTC、および原発腫瘍細胞のCD47、PD-L1、DRなどの発現を評価し、phenotype解析を行う。個体の免疫学的遺伝子多型解析、及び抗GPC3抗体存在下にNK細胞、マクロファージとの混合培養試験を行い、NK細胞療法をはじめとする免疫療法によるCTCs制御の可能性を探求する。
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