研究課題
現在、肝切除術・生体肝移植術における問題点の一つとして、術後肝不全及びsmall for size 症候群であり、いずれも術後の肝再生遅延が原因とされており、しばしば致死的となる。今回我々はこの研究課題に対し、オートファジーを利用する。オートファジーは細胞内の蛋白質再編成とエネルギー産生に極めて重要な役割を果たしており、肝再生という高度に組織化された生命現象をコントロールする可能性は極めて高いと考えられるが、肝再生における役割はいまだ不明である。今回の研究では、正常マウスの肝再生におけるオートファジーの動態評価の結果をもとに、オートファジーノックアウトマウスを用いた基礎的研究を行うとともに、種々の病態(脂肪肝・非アルコール性脂肪肝炎・肝硬変モデル)においてオートファジーの制御による肝再生治療実用化にむけた基礎的研究を行った。(1)マウス再生肝・脂肪肝においてオートファジー(AP)の発現は術後12時間後より高値となり以降漸減した。AP抑制によってcyclin D1の発現低下及び細胞周期S期の減少した。(3)オートファジーKOマウスでは、肝組織ATPの低下を認めるとともに、BrdU取込率の低下、血清ALT及びアポトーシス増加、ユビキチン化蛋白質の蓄積を認めた。ミトコンドリア(Mt)の障害を認めるとともにβ酸化関連酵素の低発現を認めた。以上より、APは再生時の肝細胞で活性化し、脂肪肝肝再生に重要な役割を果たしていた。この機序としてはMtにおけるβ酸化を介したエネルギー産生が重要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
各実験系より以下の結果が得られた。(1)マウス再生肝(脂肪肝)においてオートファジー(AP)の発現は術後12時間後より高値となり以降漸減した。AP抑制によってcyclin D1の発現低下及び細胞周期S期の減少した。(3)オートファジーKOマウスでは、肝組織ATPの低下を認めるとともに、BrdU取込率の低下、血清ALT及びアポトーシス増加、ユビキチン化蛋白質の蓄積を認めた。ミトコンドリア(Mt)の障害を認めるとともにβ酸化関連酵素の低発現を認めた。以上より、APは再生時の肝細胞で活性化し、脂肪肝に於ける肝再生に重要な役割を果たしていた。この機序としてはMtにおけるβ酸化を介したエネルギー産生が重要であると考えられた。
本研究に於いては肝再生に於けるオートファジーの役割の解明を行い、さらに脂肪肝におけるオートファジーの働きを明らかにすることを目的としている。(1)肝再生過程に於けるオートファジーとミトコンドリア機能に関する検討:70%肝切除マウスの肝組織を経時的に採取し、ミトコンドリアによるエネルギー産生の推移およびミトコンドリア障害の定量と活性酸素(ROS)の定量を行う。(2)肝再生におけるオートファジー依存性β酸化及によるエネルギー代謝に関する検討:前述の経時的に採取した肝切除後組織を用いて肝脂質の経時的変化の測定とミトコンドリアによるエネルギー産生の推移に関する定量を行う。(3)GFP-LC3型レンチウイルスベクター導入による肝再生能の回復に関する検討:肝特異的オートファジーKOマウス(Atg5)に於いて、GFP-LC3型レンチウイルスベクターの導入を行い、オートファジー高発現による肝再生能の回復が得られるか否かの検討を行う。(4)脂肪肝マウスを用いた再生脂肪肝に於けるオートファジーの役割に関する検討:dB/dBマウス(肥満、糖尿病、脂肪肝)マウスに於いて肝切除(70%)を行い、LC3の定量化を含むオートファジーの評価と肝再生に関する評価を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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