研究課題/領域番号 |
15K10167
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池上 徹 九州大学, 大学病院, 助教 (80432938)
|
研究分担者 |
副島 雄二 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30325526)
池田 哲夫 九州大学, 大学病院, 准教授 (60585701)
調 憲 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264025) [辞退]
吉住 朋晴 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80363373)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | オートファジー / 肝再生 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
本研究に於いては肝再生に於けるオートファジーの役割の解明を行い、さらに脂肪肝におけるオートファジーの働きを明らかにすることを目的としている。我々は、マウス肝切除モデルを確立し、正常肝における再生肝オートファジーの定量化を、LC3を用いた免疫組織染色(オートファゴゾーム)にて行った。Cre-loxPの系を用いて、肝特異的にオートファジー関連遺伝子(Atg5)のノックアウト(KO)マウスを作成した。さらに、70%肝切除時の再生肝を経時的に採取し、肝重量体重比、BrdU取り込み率、細胞周期調節蛋白質CyclinD1の活性、細胞周期S期への移行、血清ALT値などを比較検討することで、オートファジーの役割を明らかにすることができた。電子顕微鏡及びウエスタンブロットによる検討によって、正常肝においてオートファジーは術後1日目をピークに高発現していることが判明した。さらに、オートファジーKOマウスにおいて、核の増殖能の低下、障害蛋白質の蓄積、肝機能の低下早期に認めた。その一因としては、p21蛋白質に起因する細胞周期の遅延(細胞周期G2やS期の減少や、肝組織中ATPの低下を認めた。具体的には肝再生時にオートファジーがBrdU取り込み率の低下、p62蛋白質に強く関わることが示された。予想外にも、それらの原因として、p21蛋白質に起因する細胞周期の遅延(細胞周期G2やS期の減少、CyclinDの低発現)や細胞老化(cell senescence)の促進が考えられたことが、本研究による新規発見であるとともに、病的肝における再生遅延の機序解明に深くつながると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り正常肝における再生肝のオートファジーの役割を明らかにすることができた。具体的には、肝特異的にオートファジー関連遺伝子(Atg5)のノックアウト(KO)マウスを用いることで、肝再生時にオートファジーが核の増殖能の低下(BrdU取り込み率の低下)、障害蛋白質の除去(p62蛋白質)、肝機能の維持(AST/ALT値、血清アルブミン値)に強く関わることが示された。予想外にも、それらの原因として、p21蛋白質に起因する細胞周期の遅延(細胞周期G2やS期の減少、CyclinDの低発現)や、肝組織中ATPの低下、細胞老化(cell senescence)の促進が考えられたことが、本研究による新規発見であるとともに、病的肝における再生遅延の機序解明に深くつながると考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
dB/dBマウス(肥満、糖尿病、脂肪肝)マウスモデルにおいて、70%肝切除術を施行し(大量肝切除モデルは90%肝切除)、術後1・2・4・7日目の肝組織を採取する。ATP assay kit(Bio Assay Systems, EATP-100)を用いて、ATP産生量を定量化する。②初代培養の肝細胞における、ミトコンドリア膜のpermeabilityの測定を行う。測定は、Mit-E-φ Mitochondrial Permeability Detection Kit (BIOMOL, AK-116)を用いる。また、ミトコンドリア膜の障害原因としてROSの定量化を行う。測定は、Dichlorofluorescein diacetate assay (FACS)を用いる。③上記組織を用いて、ズダンⅢ染色、オイルレッド染色を行い、肝再生に伴う肝脂肪化を定量化する。さらに、オートファジーの標識マーカーであるLC3の蛍光染色を行い、上記の脂肪免疫染色との2重染色を行い、脂肪とオートファジーとの関係を形態的に評価する。これらの検討により脂肪肝と正常肝におけるオートファジーの動態の違いを明らかにする。
|