研究課題
抗C 型肝炎ウイルス治療により肝炎ウイルスが消失し肝炎が鎮静化した状態、すなわちウイルス学的著効( S V R )を示した後に発生した肝細胞癌のゲノム・エピゲノムの統合解析によりC 型肝炎治癒後肝癌発生の機序を明らかにすることを目的に研究を開始した。約2000例のHCCに対する肝切除手術を行った症例の臨床情報、予後を詳細に検討し研究対象症例の抽出を行った。切除症例の中から、1)SVR後に発生した肝癌で術後2年以内に再発した3例、2)SVR後に発生した肝癌で術後2年以上再発していない4例、3)HCV陽性の肝癌で術後2年以内に再発した5例、4)HCV陽性の肝癌で術後2年以上再発していない4例の合計4グループ、計16症例を抽出した。各症例の癌部組織、非癌部肝組織の凍結組織よりそれぞれゲノムDNA とshort/long RNA fraction 用に全RNA (>50μg)を抽出し精製した。これらの症例のDNAサンプルを用いてエピゲノムメチル化解析を行うため、ターゲットメチローム用の鋳型調整を行った。今年度は、これら16サンプルに加えて16サンプルを追加し、合計32サンプルを用いてPBAT (post-bisulfite adaptor tagging)法を用いて全ゲノムバイサルファイトシークエンスを行った。バイサルファイト処理を施した全ゲノムDNAを次世代シークエンサーを用いて配列決定し、ゲノム上の全シトシンのメチル化状態(メチローム)を調べることに成功した。そして二次解析によって臨床病理学的因子とメチル化状態との相関を解析している。
2: おおむね順調に進展している
今回の解析では、SVR 肝癌発生の分子機序を解明するためにエピゲノム・トランスクリプトーム統合解析とバイオインフォマティクスの手法を用いて網羅的なpathway 解析を行うことを目標にしている。現在までに抗C 型肝炎ウイルス治療によりSVR を得られた後に発生した原発性肝癌の症例を抽出し、再発予後を含めた臨床病理学的因子を解析した。32症例の肝癌組織、および非癌部肝組織よりゲノムDNAを抽出し、網羅的な全ゲノムメチル化解析を行うことに成功した。臨床病理学的因子との相関解析やpathway解析も進んでおり研究計画はおおむね順調に進展していると自己点検による評価をした。
現在全メチル化シークエンスを行い配列を決定するところまで終了した。今年度はスーパーコンピュータを用いてその結果をかしかし、さらに解析を進めていく。SVR 肝癌に特異的なエピゲノム異常およびパスウェイ異常を同定する。さらにその後は、cDNAマイクロアレイによって遺伝子発現を調べ、エピゲノム異常と遺伝子発現異常の解析を進め、SVR肝癌の遺伝子異常を統合解析を当初の予定どおり行っていく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (2件)
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