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2015 年度 実施状況報告書

癌微小周囲環境における補体を介した間質細胞の増殖・転移促進効果に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K10171
研究機関熊本大学

研究代表者

中原 修  熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40583042)

研究分担者 岡部 弘尚  熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40573621)
橋本 大輔  熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (80508507)
新田 英利  熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (90555749)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード補体C5a / C5a受容体 / 癌間質細胞 / 肝星細胞 / 浸潤 / 転移
研究実績の概要

近年、補体C5aに対する受容体C5a receptor(C5aR)は癌細胞自身にも発現しており、増殖・浸潤に関与していることが明らかになってきた。
癌細胞は自身のC5aRを利用し浸潤・増殖を促進しているが、癌の微小環境において自身の増殖、浸潤に有利な環境を作り出している可能性がある。Xuらは肝stellate cell(HSC)はC5aR発現を有し、C5aにより活性化され、αSMA発現やヒアルロン酸の産生を促進することで肝の線維化を誘導すると報告、Okabeらは活性化したHSCや癌周囲の線維芽細胞cancer-associated fibroblasts(CAF)は肝内胆管癌や大腸癌肝転移の浸潤を促進すると報告しており、肝HSCやCAFはC5aRを介して活性化することで、様々なケモカインを産生し、癌の浸潤を促進させている可能性がある。
実際、癌細胞自身がC5aRを発現している割合は、癌腫によって様々ではあるが、胃癌症例においては31%、肝細胞癌で39%と決して高くないため、癌細胞のC5aRをターゲットとした治療は必ずしも全症例に効果が期待できるわけではない。が、C5aRは癌細胞自身に発現し、自身の浸潤・転移能を獲得している以外にも、このような癌と間質はC5a‐C5aR axisを介して浸潤・転移を促進させている可能性が考えられるため、癌細胞自身にC5aRの発現がなくても間質のC5aRを治療標的とし、その相互作用を抑制することで癌の浸潤・転移を抑制できる可能性がある。
本研究の目的は、肝HSCやCAFに着目してこれら間質細胞と肝癌(肝細胞癌、肝内胆管癌、大腸癌肝転移)におけるC5a-C5aR機構を介した転移・浸潤メカニズムを解析し、tumor-stromal interactionにおけるC5aRの役割について解析する。更に臨床応用に繋がることを目指しこれらをターゲットとした治療効果について検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)ヒト肝細胞癌(HCC)切除標本のHSCにおけるC5aRの発現について検討した。HCC切除標本を抗C5aR抗体、抗αSMA抗体でそれぞれ二重蛍光免染し、共焦点顕微鏡で家訓したところ、αSMAを発現している細胞に一致してC5aRを発現していることが確認された。
2)HSC、HCCにおけるC5aRの発現について検討した。HSC培養細胞であるLi-90、LX2、ヒト線維細胞であるHS68についてC5aR抗体によるwestern blottingでC5aRの発現を検討したところ、LX2においてC5aRの発現を認めた。ヒトHCC細胞株であるHuH1、HuH7、HLF、HLE、SKHEP-1、HepG2、PLC/PRF/5、Li7についてそれぞれC5aRの発現を評価したところ、HuH1、HuH7に高発現を認めた。次に、C5aR発現を有するLX2にrecombinant C5a (rC5a)で刺激したところ、時間依存的にαSMAの発現亢進を認めたことから、C5a-C5aRによりHSCの活性化が起こってることが示唆された。
3)つぎにヒトHSCがHCCの増殖に与える影響について検討した。LX2とC5aR発現のないHCC細胞株HLF、HLEをそれぞれrC5aの存在下で共培養し、HCC細胞株の増殖能について検討したが、rC5aで刺激を与えても癌細胞の増殖能は変化を認めなかった。
4)ヒトHSCがHCCの浸潤に与える影響について検討した。Invasion assay kitを用いて実験を行った。Chamberの下層にLX2を、上層にC5aRの発現のないHCC細胞株をアプライし、下層のLX2をrC5aで刺激したところ、濃度依存的にHCC細胞株の浸潤能が上昇することがわかった。LX2の非存在下ではHCC細胞株の浸潤能は亢進しなかった。よってHSCはrC5aに反応することで癌細胞の浸潤能を亢進させていることが示唆された。
以上より当初の予定通りに進んでいる。

今後の研究の推進方策

以上の結果から、HSCはC5aRを発現しており、rC5aにより活性化し、かつ癌細胞の浸潤を促進させていることが分かった。今後の予定として
1)HSCのC5aRをsiRNAでknockdownあるいはC5aR antagonistで抑制し、浸潤能が減少することを確認する。
2)肝細胞癌、肝内胆管癌、大腸癌はCAFから分泌されるさまざまなサイトカインによってその癌浸潤効果を高めている(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2011)。よって癌間質細胞であるHSCはC5a-C5aRを介して活性化されこれらサイトカインを分泌することで癌細胞増殖・浸潤を促進させている可能性がある。そこでこの浸潤・増殖メカニズムについてサイトカインアレイを用いて検討する。C5aで刺激したHCS、CAFのサイトカインアレイ(SDF-1、HGF、CXCL8, CXCL12等)を行い、産生亢進しているサイトカインを解析する。産生が亢進したそれぞれのサイトカインを特異的に阻害した場合の癌細胞の増殖・浸潤抑制効果についてそれぞれgrowth assay、invasion assayを用いて解析する。
3)Vivoでの評価を行う。C5aRをknockdownしたHSC+癌細胞をヌードマウスにそれぞれ皮下投与し肺転移巣の腫瘍径を比較する。さらにC5aR antagonistを投与した場合の腫瘍形成能の抑制効果についても検討する。また尾静脈からそれぞれの共培養した細胞群を投与し、肺転移の形成能について比較し、C5aRをターゲットとした治療が抗腫瘍効果を有するか否かを検討する。

次年度使用額が生じた理由

当初想定より順調に実験を行うことができ、必要最小限の消耗品で済んだため。

次年度使用額の使用計画

各種実験及び動物実験にかかる消耗品や実験動物購入費に充てる。また、データ管理及び資料作成等にかかる事務補佐員の人件費としても使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Chemotherapy-induced nausea and vomiting in hepatobiliary and pancreatic cancer patients treated with chemotherapy: a prospective observational study by the CINV Study Group of Japan2016

    • 著者名/発表者名
      Hidetoshi Nitta, Hideo Baba, Kazuya Sugimori, Junji Furuse, Shinichi Ohkawa, Kazuhide Yamamoto, Hironobu Minami, Mototsugu Shimokawa, Go Wakabayashi and Keisuke Aiba, CINV Study Group of Japan.
    • 雑誌名

      Anticancer Res.

      巻: 36(4) ページ: 1929-35

    • 査読あり
  • [学会発表] 肝切除におけるソフト凝固システム、バイポーラ凝固切開装置、自動縫合器の有用性と問題点2015

    • 著者名/発表者名
      新田英利、坂本悠樹、山下晃平、大徳暢哉、武山秀晶、甲斐田剛圭、有馬浩太、東孝暁、髙城克暢、林洋光、橋本大輔、近本亮、石河隆敏、別府透、馬場秀夫
    • 学会等名
      第27回日本肝胆膵外科学会・学術集会
    • 発表場所
      ホテルグランパシフィック LE DAIBA(東京)
    • 年月日
      2015-06-11 – 2015-06-11

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公開日: 2017-01-06  

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