研究課題
HCC切除標本を抗C5aR抗体、抗αSMA抗体でそれぞれ二重蛍光免染し、共焦点顕微鏡で確認したところ、αSMAを発現している細胞に一致してC5aRを発現していることが確認された。また、HSC培養細胞であるLi-90、LX2、ヒト線維細胞であるHS68についてC5aR抗体によるwestern blottingでC5aRの発現を検討したところ、LX2においてC5aRの発現を認めた。ヒトHCC細胞株であるHuH1、HuH7、HLF、HLE、SKHEP-1、HepG2、PLC/PRF/5についてそれぞれC5aRの発現を評価したところ、HuH1、HuH7に高発現を認めた。次に、C5aR発現を有するLX2にrecombinant C5a (rC5a)で刺激したところ、時間依存的にαSMAの発現亢進を認めたことから、C5a-C5aRによりHSCの活性化が起こってることが示唆された。LX2とC5aR発現のないHCC細胞株HLF、HLEをそれぞれrC5aの存在下で共培養し、HCC細胞株の増殖能について検討したが、rC5aで刺激を与えても癌細胞の増殖能は変化を認めなかった。以上からC5aで刺激されたHSCにはHCCの増殖能に関与していないことが示唆された。Invasion assay kitを用いて、Chamberの下層にLX2を、上層にC5aRの発現のないHCC細胞株をアプライし、下層のLX2をrC5aで刺激したところ、濃度依存的にHCC細胞株の浸潤能が上昇することがわかった。LX2をW-54011と一定時間反応させ、C5aで刺激した後、HCCの浸潤能について検討した結果、W-54011の存在下ではHCC細胞株の浸潤能は亢進しなかった。よってC5aR antagonistはHSCを介したHCCの浸潤能を抑制することがわかった。
2: おおむね順調に進展している
各実験結果により、C5aで刺激されたHSCはなんらかのサイトカインを産生することでHCCの浸潤能を亢進させていることが考えられる。現在、このサイトカインを同定するためサイトカインアレイを用いて解析中であり、おおむね順調に進行中である。
本年度の結果から、ヒト肝細胞癌組織においてHSCは活性化しており、かつHSCはC5aRを発現している。In vitroにおいてもrC5aにより活性化し、かつ癌細胞の浸潤を促進させていることが分かった。今後の予定として1)肝細胞癌、肝内胆管癌、大腸癌はCAFから分泌されるさまざまなサイトカインによってその癌浸潤効果を高めている(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2011)。よって癌間質細胞であるHSCはC5a-C5aRを介して活性化されこれらサイトカインを分泌することで癌細胞増殖・浸潤を促進させている可能性がある。そこでこの浸潤・増殖メカニズムについてサイトカインアレイを用いて検討する。C5aで刺激したHCS、CAFのサイトカインアレイ(SDF-1、HGF、CXCL8, CXCL12等)を行い、産生亢進しているサイトカインを解析する。産生が亢進したそれぞれのサイトカインを特異的に阻害した場合の癌細胞の増殖・浸潤抑制効果についてそれぞれgrowth assay、invasion assayを用いて解析する。2)HSCのC5aRをsiRNAでknockdownあるいはC5aR antagonistで抑制し、浸潤能が減少することを確認する。3)Vivoでの評価を行う。C5aRをknockdownしたHSC+癌細胞をヌードマウスにそれぞれ皮下投与し肺転移巣の腫瘍径を比較する。さらにC5aR antagonistを投与した場合の腫瘍形成能の抑制効果についても検討する。また尾静脈からそれぞれの共培養した細胞群を投与し、肺転移の形成能について比較し、C5aRをターゲットとした治療が抗腫瘍効果を有するか否かを検討する。
実験計画が順調に進んだことと、医局内保管の消耗品をしようすることが出来たため。
growth assay、invasion assayを用いた解析にかかる試薬、消耗品の購入費や、Vivoでの評価のため、ヌードマウスの購入・飼育費に充てたいと考える。また、研究データの整理・集約にかかる事務的作業をしてもらう事務補佐員の雇用経費に充てたい。
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