本研究は肝切除術または肝臓移植における虚血再灌流障害について、マイトファジーに焦点をあて、その機構を解明するものである。さらにマイトファジーのイニシエーターであるParkinの働きを明らかにすることにより、虚血再灌流傷害に対する新たな予防法の礎を築くものである。本研究は動物実験において検証され、実証された結果は将来的に臨床研究への応用を目標とするトランスレーショナルスタディである。さらにPARK2への介入による虚血再灌流障害の軽減策の検討も世界初の試みとなる。オートファジーと肝虚血再灌流傷害との関係は過去にいくつか報告があるものの、いずれもオートファジー亢進の最下流を確認するにとどまっており、本質は未解明なままである。本研究では虚血再灌流障害により膨化した異常なミトコンドリアが出現することが明らかになった。同時に細胞のアポトーシスシグナルの上昇を認めた。虚血再灌流障害後期にはアポトーシスシグナルおよびアミノトランスフェラーゼは漸減した一方、Parkinタンパク発現は上昇した。ParkinをコードするPARK2遺伝子が欠損したマウスを用いた動物実験では、野生型と比較して虚血再灌流障害が強く出る傾向にあった。以上よりParkinが虚血再灌流障害において重要な役割を担うことが推察された。 今後、申請者らは肝虚血再灌流傷害におけるParkin、マイトファジーを介した生体防御機構について解明し、マイトファジーを標的とした新たな肝虚血再灌流 傷害の軽減策を検討する。
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