研究実績の概要 |
Galectin-9は好酸球遊走因子として発見されたレクチンタンパクであり、check point分子の一つであるT-cell Immunoglobulin Mucin-3 (Tim-3)のligandである。作用としては、CD4陽性T細胞の抑制・制御性T細胞の誘導・単球からの炎症性サイトカイン産生など、免疫賦活と寛容の二つの側面を有する。 肝虚血再灌流障害(Ischemia and Reperfusion Injury:IRI)においては、IR刺激に伴い肝組織中に誘導され血中に放出されたGalectin-9が再灌流後の肝障害を抑制するという実験結果が得られ国際学会誌への報告に至った (Hirao H, Uchida Y, et al. Liver Transplantation, 21:969-81,2015)。 次に、虚血そして再灌流早期に肝細胞ではない非実質細胞にGalectin-9が発現していることが判明し、形態学的にクッパー細胞(肝マクロファージ)であると判断した。肝IRIにおいてはクッパー細胞がGalectin-9を産生することで、肝障害に対して抑制的に働くのではないか、という仮説を掲げ、クッパー細胞が産生するGalectin-9の役割に関しての解明と、TIM-3シグナルによる制御機構について継続して研究を行なっている。 まずマウスのクッパー細胞の消去モデルの確立およびクッパー細胞の移植システムを確立させた。Galectin-9ノックアウトマウスへのクロドロン酸リポソームの経門脈的投与によりクッパー細胞を消去させ、野生型マウスもしくはGalectin-9ノックアウトマウス由来のクッパー細胞を移植して、IR刺激を加えるという実験を行なった。野生型マウス由来クッパー細胞の移植では肝障害が有意に軽減したという興味深いデータが得られた。クッパー細胞由来のGalectin-9が肝IRIの抑制に重要な役割を果たしていることを示唆する所見と考えている。
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