研究課題/領域番号 |
15K10178
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
川原 敏靖 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60407260)
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研究分担者 |
松野 直徒 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00231598)
古川 博之 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70292026)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵島移植 |
研究実績の概要 |
21.4―40.4kg(平均27.6kg)の豚を購入し研究を行いました。点滴ラインを留置し、気管挿管を行い、全身麻酔下で開腹膵臓全摘手術を行い、1型糖尿病のモデル作成を検討いたしました。 現在までに17頭の豚に対して手術を行い、術中死が1例、術後4日目、6日目、12日目、13日目にそれぞれ1例ずつ死亡し、生存率は70.6 %でした。摘出膵は32―107g(平均73.4kg)でした。研究を開始してから9例目までは術後、4日目、7日目に血液検査を行い、それ以降の実験では術後、1日目、2日目、7日目、14日目に血液検査を行い血糖値、肝逸脱酵素ASTを測定いたしました。術前の血糖値は平均120.8 mg/ dLでした。膵臓全摘により、術後1日目に血糖値平均153.8 mg/ dL、術後2日目に血糖値平均164.9 mg/ dLとやや上昇傾向でした。術後7日目には平均205.6 mg/ dLとさらに上昇いたしましたが、術後14日目には平均168.8 mg/ dLとインスリン投与なしに自然に下降いたしました。AST値は術前値の25.6 IU/Lから術後1日目には64.1 IU/Lと一時的に上昇いたしましたが、その後下降し、術後7日目には25.6 IU/Lと術前値と同値になり、おそらく手術の影響による上昇と考えられました。膵臓全摘したにも関わらず血糖値の持続的な高値を伴う糖尿病が誘導されないため、不完全な膵臓切除の可能性を考慮し、膵臓全摘後の豚に術後2日目と7日目にストレプトゾトシン50 mg/日を投与し、残存膵島破壊を試みました。しかしながら、術後14日目の血糖値は234 IU/Lとやや高値ではあるものの糖尿病は誘発されませんでした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は昨年に引き続き、豚における1型糖尿病のモデル作りを行うことを主眼におき実験を行いました。今年度も、腹腔鏡下膵臓全摘術を行う前に、開腹で確実に膵臓全摘を行い、豚膵臓の解剖の理解を深め、さらには膵全摘後に確実に豚糖尿病モデルが作成できるかどうかを検討することといたしました。現在までに17頭の豚に対して開腹の膵臓全摘術を行い、1型糖尿病モデルの作成を試みました。開腹膵臓全摘の手技は徐々に安定してきたものの、予想に反して血糖値上昇は認められず、安定した糖尿病状態を誘導することができず、現在模索中しており、やや計画が遅れております。 膵島移植の世界的権威であるカナダ アルバータ大学のJames Shapiro教授に相談したところ、豚の膵全摘は難易度が高いため、安定したモデルを作成するには時間がかかるとのお話でした。前回も考察したように、豚の膵臓が下大静脈の背側に回り込んでいるために、切除が不完全であった可能性もあり、それに対してストレプトゾトシンを投与しましたが、効果は認められませんでした。今後はモデル変更を含め検討しており、さらに研究を継続しております。
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今後の研究の推進方策 |
前述のごとく、開腹膵臓全摘によっても切除できていない残膵の膵島が機能して、糖尿病が誘発されない可能性があると考えております。膵臓全摘術の手技は安定してきましたが、下大静脈に巻きついている膵臓を切除するのはリスクが高く、手術死亡率が上がる可能性があると考えます。そこで、前回1度だけ行った、膵臓全摘後にストレプトゾトシンを投与する計画を2-3例検討してみたいと考えております。 しかしながら、その効果が認められない場合は、本来の目的であるhepatocyte growth factor (HGF)の細胞保護効果を確認するために、マウスモデルで検討して、その効果を判定し、その後、大動物へ応用することも検討しております。
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次年度使用額が生じた理由 |
膵臓全摘を行ってっても糖尿病が誘発されず、予測された研究結果が得られておりません。そのため、次年度繰越金が生じてしまいました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、in vitroの研究も並行して行う予定ですので、それに必要な器具、動物を購入予定としております。
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