<目的>本研究の目的は、膵・消化管神経内分泌腫瘍(gepNET)の同一症例間の原発巣と肝転移巣のタンパク発現の比較をプロテオミクスにより網羅的に解析し、転移関連因子や薬剤治療の新規ターゲットを発見することである。<方法>膵神経内分泌腫瘍(pNET)の原発巣に加え肝転移巣を切除した症例のホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)から膵腫瘍部、肝腫瘍部をレーザーマイクロダイセクション(LMD)により選択的に回収する。LC-MS/MSによる網羅的解析でプロファイルを行い発現タンパクを群間比較し発現に差のあるタンパクを抽出する。抽出したタンパクの発現をpNET切除標本で免疫組織化学で検証する。<結果>2000年から2014年までに当科で切除したpNET101例のうち、同時性または異時性に肝転移を伴った症例を17例認めた。そのうち、膵原発巣と肝転移巣両方から十分量のサンプルを回収できた症例が7例あった(ガストリノーマ1例、非機能性6例)。7例の膵腫瘍部、膵正常組織、肝腫瘍部、肝正常組織をLMDで選択的に回収し、LC-MS/MSにより膵腫瘍部2622種類、膵正常組織2502種類、肝腫瘍部2993種類、肝正常組織2306種類のタンパクを同定した。膵腫瘍部と肝腫瘍部の群間比較で、膵腫瘍部で33種類、肝腫瘍部で76種類が相対的に2倍以上発現しており、そのうち10種類を候補タンパクとして選択した。LMDを行った7症例で膵腫瘍部と肝腫瘍部において免疫組織化学を行い候補タンパクの発現を検討中である。
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