研究実績の概要 |
<目的>本研究は膵神経内分泌腫瘍(pNET)の同一症例間の膵腫瘍部と肝転移巣のタンパク発現をプロテオミクスにより網羅的に比較解析し、新規肝転移関連タンパクを発見することである。 <方法>前年度まで:プロテオミクスの網羅的解析から新規肝転移関連タンパクの候補タンパクを10種類に絞り込んだ。今年度:プロテオミクスの対象とした症例の膵腫瘍部と肝転移巣において絞り込んだ候補タンパクの発現を免疫組織化学で検証し、さらに候補タンパクを絞り込むことにより候補タンパクを決定した。pNET切除症例の膵腫瘍部において、上記で選択した候補タンパクの発現を免疫組織化学で評価した。これらの候補タンパクの発現と肝転移無再発生存期間の関係を検討した。候補タンパク質の発現を含めた臨床病理学的因子と膵切除後肝転移再発との関係をCox比例ハザードモデルによる多変量解析で検討した。 <結果>免疫組織化学による検証から、ANXA6、CNPY2、RAB11B、TUBB3を候補タンパク質に決定した。CNPY2陽性群は陰性群に比べて、肝転移無再発生存期間が有意に不良であった (p=0.012)。また、ANXA6陽性群は陰性群に比べて肝転移無再発生存期間が不良な傾向にあった (p=0.099)。多変量解析では、肝転移に対する独立した不良因子は、CNPY2陽性 (HR: 5.16, 95%CI; 1.33-33.92, p=0.016), 腫瘍径42mm以上 (HR: 4.38, 95%CI: 1.26-14.22, p=0.022)、リンパ管浸潤 (HR: 3.25, 95%CI: 1.01-11.29, p=0.048)であった。 <研究成果>pNETの新規肝転移関連タンパクとしてCNPY2を発見した。ANXA6はpNETの肝転移に関与している可能性が高いことが明らかにされた。
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