研究課題/領域番号 |
15K10180
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉富 秀幸 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (60375631)
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研究分担者 |
古川 勝規 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (00400987)
高野 重紹 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20436380)
宮崎 勝 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (70166156)
加藤 厚 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (70344984)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経内分泌腫瘍 / Sox2 / Pdx1 / NeuroD / 膵臓発生 |
研究実績の概要 |
膵消化管神経内分泌腫瘍において生物学的な特性を加味した新しい分類法を検討し、将来はその分類に基づく最適な治療法を開発することが本研究の目的である。 これまで、本疾患の分類はWHOによる腫瘍内の増殖細胞の割合により行われてきた。本分類は疾患の予後を反映し、有用である事は疑いないものの、単に増殖能による分類であり、その生物学的な特徴を示すものでは無い。そこで、腫瘍の発生起源を検討する為、特に膵神経内分泌腫瘍に注目し、膵内分泌細胞の分化、発生に関わる因子の発現を検討した。これまで、神経への分化に重要で、多分化能を保持している細胞に発現するSox2と膵原器から分化した内分泌細胞、特にインスリン発現細胞に分化する際に発現するPdx-1について、当院で切除を行った46例の神経内分泌腫瘍の切除標本における発現を検討した。するとSox2の発現は6例にのみ認め、また、発現例においては全例が15ヶ月以内に死亡しており、非常に予後不良であった。特に構造職能を有するG3腫瘍の7例中5例にその発現を認め、悪性度の高さを示すものであった。一方、Pdx-1については内部コントロールとしてラ氏島の発言よりもつよく腫瘍細胞に発現しているものを高発現群としたところ、25例が高発現であり、高発現群が有意に予後良好であった。加えて、Pdx1と同様に膵発生において分化した内分泌細胞に発現が認められるNeuroDについてその発現を陽性細胞数で高発現、低発現に分類したところ、低発現症例は7例のみで、その予後も高発現群に比較して有意に予後不良であった。 このような検討からSox2発現腫瘍は未分化な神経細胞がその期限になっている可能性があり、一方、Pdx1やNeuroD陽性腫瘍はある程度分化した細胞がその期限になっている可能性が示唆された。そのため、特に未分化なSox2陽性腫瘍は極めて予後が不良であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sox2やPdx1の神経内分泌腫瘍細胞における癌化の役割を検討する目的で、細胞株を用い、その発現をノックダウンもしくはノックアウトすることでの変化を検討しようとしている。しかし、多くの方法を用いたものの、これまで、その発現抑制が十分に出来ておらず、その機能の検討が進んでいない。 一方で、特に予後不良である神経内分泌癌におけるこれらの因子の発現の検討をより深く進めている。残念ながらこのような腫瘍は症例数が極めて少なく、当施設での経験症例のみでは十分な検討が出来ない。そこで、京都大学、愛知県がんセンターなど、本疾患の診療で著明な施設との共同研究を進め、これらの施設の経験症例を含めることで、多くの症例の検討を行おうと考えている。現在、40症例超の標本が収集できる予定であり、今後、その免疫染色を通してSox2やPdx1の発現を検討し、臨床病理学的因子との比較により、その特徴を探っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述の様に細胞実験に関しては発現抑制が困難であるため、今後の成功の可能性は薄いと思われる。 そこで、特に予後不良である神経内分泌癌に注目し、前述の様に全国規模の研究を行い、多くの症例でその発現を検討する予定である。既にこの研究については倫理審査が認められており、現在、各施設からの標本の提供を待っている状況である。 加えて、NeuroDや神経分化の初期に関わるとされるmASH1など、神経、内分泌細胞の分化に関わる他の因子の発現を検討し、神経内分泌癌の分類を試みる予定である。
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