研究課題/領域番号 |
15K10187
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
当間 宏樹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80437780)
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研究分担者 |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脂肪組織由来幹細胞 / 癌関連線維芽細胞 / 活性化型膵星細胞 / S100A4 / High fat diet / 膵周囲脂肪組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脂肪組織構成細胞と膵癌細胞との相互作用を明らかとし、膵外浸潤における新たな間質標的治療を確立することである。 本年はまず、膵癌自然発生マウスモデルであるKPCマウスに高脂肪食であるHigh fat dietを投与する実験を行い、内臓脂肪の増加が膵癌の浸潤転移に及ぼす影響を解析した。High fat dietはマウスに発生する膵原発腫瘍の大きさを有意に増加させ、更に遠隔転移も増加させた。このことから、内臓脂肪の増加は膵癌の浸潤転移に促進的な作用を及ぼすことが示唆された。 次に、脂肪細胞が膵癌細胞に及ぼす影響を解析するため、in vitroで膵周囲脂肪組織浸潤を擬似的に再現した3D培養モデルをコラーゲンゲル包埋法によって作成した。マウスから採取した内臓脂肪は細かく切断してコラーゲンゲル内に埋めると少なくとも3週間はその形態が維持されることを確認した。脂肪組織を下層に、膵癌細胞を上層にそれぞれコラーゲンゲル内に埋めて2週間培養を行い、その組織学的な変化を解析した。すると、脂肪組織浸潤モデルではコントロール群と比較して、膵癌細胞は散在性かつ紡錘状の形態に変化し、その増殖能が低下することを同定した。また脂肪組織浸潤モデルでは、癌細胞周囲の線維化が亢進することも示され、膵周囲脂肪組織の線維化も重要であることが示唆された。 以上から、膵周囲脂肪組織は膵癌細胞の形態や機能に影響し、線維化を伴いながら、腫瘍促進的な作用を及ぼしている可能性が示唆されたが、具体的にどの因子が癌細胞の機能に関与を解明していくのが次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は膵癌自然発生マウスであるKPCマウスを用いた実験で有意な結果を得ることができた。また、in vitroのモデルとして3D培養による脂肪浸潤モデルを確立し、癌細胞と脂肪組織との相互作用をより生体に近い状態で解析することに成功した。新しい実験系を確立によって、脂肪組織の腫瘍促進的な作用を示すことに成功したため、本研究の進捗状況は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪組織が膵癌細胞に及ぼす影響を更に解析するため、脂肪組織培養上清を作成し、それを添加した際の遊走能・浸潤能・増殖能の変化を解析する予定である。また、脂肪組織培養上清中の質量分析を行って、培養上清中の因子の中で癌細胞の機能変化に重要な因子を同定することを計画している。また、癌細胞が脂肪細胞に及ぼす影響についても解析するため、ヒトおよびマウスの脂肪組織由来幹細胞を初代培養・樹立し、成熟脂肪細胞への分化誘導を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の進捗状況は概ね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
培養用試薬、培養用器具、抗体、KPCマウス作成費用等
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