研究課題
前年度までにIn vivoの実験において内臓脂肪の増加は膵癌の浸潤転移を促進し、in vitroの実験で膵周囲脂肪組織は膵癌細胞の形態や機能に影響し、線維化を伴いながら、腫瘍促進的な作用を及ぼしていることを明らかにした。脂肪細胞培養上清が膵癌細胞に与える影響についてさらに解析を進めると、脂肪細胞培養上清の添加によって膵癌細胞質に脂肪滴が蓄積されることが分かった。脂肪細胞培養上清にはコントロールに比べてオレイン酸やリノレン酸、パルミトレイン酸などの脂肪酸が多く含まれており、中でもリノレン酸の添加は癌細胞内の脂肪滴を増加させ、遊走能、浸潤能を強く亢進することが分かった。In vivoにおける病理組織学的検討でも、膵癌細胞で脂肪滴の増加が確認できた。次に膵癌細胞が脂肪細胞に与える影響について解析するため、マウス内蔵脂肪から樹立した脱分化脂肪細胞(DFAT)をインスリン添加によって成熟脂肪細胞へ分化誘導した。樹立した成熟脂肪細胞と膵癌細胞を間接共培養すると、コントロールに比べて膵癌細胞共培養群では脂肪細胞のサイズが縮小し、脂肪細胞特異的マーカーであるホルモン感受性リパーゼ(HSL)やペリリピンの発現が低下することがわかった。ヒト膵癌切除標本の検討でも浸潤先端近傍にある脂肪細胞はその他の脂肪細胞に比べて明らかに小さく、癌細胞は脂肪細胞に対して脂肪分解を誘導し、脂肪酸の放出を促している可能性が示唆された。以上から膵癌細胞は脂肪細胞に対して脂肪酸の放出を誘導し、放出された脂肪酸、特にリノレン酸などを細胞内に取り込んで腫瘍浸潤や転移の促進に利用している可能性が示唆された。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Cancer Letters
巻: 412 ページ: 143~154
10.1016/j.canlet.2017.10.010