研究課題/領域番号 |
15K10188
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
冨永 洋平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (90304823)
|
研究分担者 |
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (70586859)
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 化合物ライブラリー / 癌間質相互作用 / 間質標的治療 / 膵星細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は膵癌の間質標的治療に関する基礎的な研究を行い、化合物ライブラリーを用いて新規治療薬の候補となり得る化合物を同定することである。 本年は、まず膵癌間質において中心的な役割を担う活性化膵星細胞のCD51の発現に着目した。ヒト膵癌切除標本においてCD51の発現を免疫組織化学染色法にて評価を行うと、間質細胞でのCD51の高発現群は有意に予後不良であることがわかった。RNA干渉によってCD51の安定的に発現を抑制する膵星細胞を作成し、ヌードマウスの皮下に膵癌細胞と共移植を行うと、腫瘍径は縮小し、腫瘍内部の間質成分が減少することが示された。これらの結果から、CD51は膵癌における癌間質相互作用において腫瘍促進的な作用を有し、治療標的の一つとなることが示された。 また、癌間質相互作用を標的とした治療薬として、カルパインの阻害剤であるカルペプチンに着目した。In vitroでカルペプチンは膵星細胞の増殖、遊走、浸潤能を濃度依存的に阻害した。また、カルペプチンで前治療を行った膵星細胞の上清を膵癌細胞に添加すると、膵癌細胞の遊走・浸潤は抑制されることがわかった。In vivoでヌードマウスの皮下に膵癌細胞と膵星細胞を共移植し、カルペプチンを腹腔内に投与して治療を行うと、腫瘍径と細胞外基質の減少を認めた。これらの結果からカルペプチンは膵癌間質を標的とした治療となり得ることが示された。 今後は、スクリーニングの系を構築して、上記の間質細胞の標的分子をターゲットとした化合物を同定していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌の癌間質相互作用において、膵星細胞のCD51が治療標的となり得る可能性を示した。また、カルペプチンが膵癌の間質成分の減少効果を介して、腫瘍抑制的に働くことを示した。しかし、化合物のスクリーニングの系の構築に関しては、膵星細胞の脂肪滴に着目して、In cell analyzerを用いたpreliminaryな検討を行ったのみで、実際の系の成熟には至っていない。このため、本年度の達成度はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
膵星細胞を標的とした治療薬に関するスクリーニングの系の構築をすすめる。具体的には我々がこれまで研究を行ってきたCD10、CD271、CD90、CD146、CD51といった表面抗原を標的としたアッセイ系の構築を計画している。また、我々は膵星細胞のオートファジーや浸潤を先導するleading cellとしての機能に着目しており、それらに着目したスクリーニングの系も有用と思われる。また、癌間質相互作用は膵癌原発巣だけではなく、肝転移巣、腹膜播種巣といった浸潤・転移した臓器においても重要な役割を担っており、中皮細胞や血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞といった間質構成細胞についても研究をすすめている。今後はこれらの細胞の転移巣形成における機能を明らかとし、これらを標的とした治療の確立についても進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
化合物のスクリーニングの系の構築に関して、In cell analyzerを用いたpreliminaryな検討を行ったのみで研究計画に遅れを生じているため。
|
次年度使用額の使用計画 |
膵星細胞を標的とした治療薬に関するスクリーニングの系の構築をすすめるため、 主に試薬類、抗体、培養用試薬、培養器具等
|