研究課題
本研究の目的は膵癌の間質標的治療に関する基礎的な研究を行い、化合物ライブラリーを用いて新規治療薬の候補となり得る化合物を同定することである。本年度は化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを行うためのアッセイ系の確立のため、膵星細胞の脂肪滴に着目した基礎的な検討を行った。非活性化型膵星細胞の特徴である細胞質内での脂肪滴の蓄積とオートファジーとの関連に着目した実験を行った。オートファジー抑制剤であるクロロキンを活性化膵星細胞に投与すると、オートファジーの抑制を介して癌細胞の遊走・浸潤が抑制されることが示された。また、ソートファジー関連遺伝子であるAtg5の発現抑制を行うと、膵星細胞の活性化が抑制されるのみならず、細胞質内での脂肪滴が増加することを同定した。また、非活性化型の膵星細胞としてヒト胎児由来の膵星細胞を用いて、飢餓条件培養やオートファジー誘導作用を持つmTOR阻害剤の投与を行うと、オートファジーの亢進に付随して、αSMAやコラーゲンⅠ、フィブロネクチンといった、膵星細胞の活性化に伴って変化する形質が誘導されることが確認された。また、細胞質内の脂肪滴はオートファジーの亢進によって減少することを同定した。これらの結果から、膵星細胞内の脂肪滴、オートファジー、膵星細胞の活性化は密接な相関関係を有していることが示された。そこで、膵星細胞内の脂肪滴を定量化することで、膵星細胞の活性化を評価するアッセイ系が確立できる可能性が考えられるため、次年度は具体的なアッセイ系の確立に取り組む必要がある。
3: やや遅れている
今年度は膵星細胞のオートファジーや脂肪滴が膵星細胞のオートファジーと関連していることを報告し、膵星細胞の治療標的としてオートファジーの制御が有用となり得る可能性や脂肪滴の定量化が化合物ライブラリーを利用したが、具体的なアッセイ系の確立や、化合物の同定には至っていないためやや遅れていると思われる。
化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを実際に行うため、アッセイ系の確立を進める。本年度解明した、膵星細胞におけるオートファジーや脂肪滴は有用な治療標的となり得る可能性があるため、これらを短時間かつ高い感度・特異度で評価する方法を、九州大学薬学部の協力を得て行う予定である。
具体的なアッセイ系の確立や、化合物の同定には至っていないため化合物ライブラリーを用いたスクリーニングができていないため。
培養用試薬、培養用器具、抗体、測定キットなど。
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Gastroenterology
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10.1053/j.gastro.2017.01.010