研究課題
本研究の目的は膵癌の間質標的治療に関する基礎的な研究を行い、化合物ライブラリーを用いて新規治療薬の候補となり得る化合物を同定することである。本年度は、膵星細胞を新しい治療標的ととらえ、膵星細胞の活性状態を評価するスクリーニング系を開発し、膵星細胞の不活性化を誘導する新規膵癌治療薬開発を行うことを目的とした。まず静止状態で膵星細胞の細胞質内で増加する脂肪滴に着目し、脂肪滴の数及び蛍光強度を数値化し、活性状態を評価するスクリーニング系を作成した。系は感度・特異度共に高く、スクリーニングに使用することに問題ないとして、東京大学創薬機構の化合物ライブラリーから薬剤の供与を受けることとなった。現在、既承認薬3398種類に対してスクリーニングを行い、その中で膵星細胞を休眠状態に誘導する可能性のある化合物(シード化合物)を152種類同定した。この中で脂肪滴の発現強度の最も高い化合物については増殖能の評価を行い、濃度依存性に膵星細胞の増殖が阻害されることを確認した。また化合物を添加した膵星細胞では、活性化の指標であるα-SMA、fibronectinの蛋白発現の低下を認めた。今後はシード化合物が膵癌細胞や、癌間質相互作用に与える影響、及びin vivoで腫瘍抑制効果を示すかを評価し、シード化合物の絞り込みを行う予定である。また薬理活性が未知の化合物についてもスクリーニングを進行中であり、新規治療開発につなげる。
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Pancreatology
巻: 17 ページ: 990~996
10.1016/j.pan.2017.08.009