研究課題/領域番号 |
15K10189
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白羽根 健吾 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10529803)
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研究分担者 |
難波江 俊永 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10467889)
鬼丸 学 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80529876)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵癌 / desmoplasia / 治療抵抗性 / drug delivery system / カルパイン |
研究実績の概要 |
化学療法抵抗性を誘導する癌間質細胞のphenotypingを行うために、まず、膵癌切除組織からヒト膵星細胞を樹立した。これまでに当研究室では50株以上作成しており、本年度も10株以上のヒト膵星細胞の樹立を行った。 膵癌のdesmoplasiaを標的とした治療抵抗性改善に関与する薬剤として、カルペプチンに注目した。カルパインとは複数の悪性腫瘍で高発現しており、細胞骨格のリモデリング、細胞シグナルなどの複数の生理学的過程に関わる因子である。その阻害薬であるカルペプチンが線維芽細胞に抑制的な効果を示すことが報告されており、カルパインが膵星細胞に与える影響を含め、カルペプチンの膵癌治療薬としての治療効果を検討した。膵癌細胞株および膵星細胞でカルパイン2の発現を認めた。カルペプチンは膵癌細胞の増殖能・遊走能・浸潤能を有意に抑制し、膵星細胞の増殖能・遊走能・浸潤能も有意に抑制した。また、カルペプチンは膵星細胞によって促進される癌細胞の遊走を有意に抑制した。in vivoの治療実験において、カルペプチンは膵癌細胞と膵星細胞の皮下共移植群において腫瘍の成長を有意に抑制した。免疫組織化学染色でαSMAやペリオスチンを指標に線維化の程度を評価すると、カルペプチン投与群で腫瘍内の間質組織の有意な減少を認めた。以上の結果より、カルペプチンは膵癌細胞・膵星細胞を直接の標的とするだけでなく、治療抵抗性に関与するdesmoplasiaを同時に制御しうる新しい膵癌治療薬となりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析については、現在解析している段階である。 また、in vitro、invivo実験により、カルペプチンは膵癌細胞・膵星細胞を直接の標的とするだけでなく、治療抵抗性に関与するdesmoplasiaを同時に制御しうる新しい膵癌治療薬となりうる可能性を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、間葉系や内皮性幹細胞のマーカーを用いて、切除組織より樹立した間質細胞集団のprospective isolationを進め、その細胞集団が膵癌細胞の化学療法治療抵抗性に与える効果の解析を進める。 さらに、化学療法抵抗性責任癌間質細胞を標的とするナノカプセルの作成を行い、最終的には、化学療法抵抗性責任間質細胞を標的とした抗線維化薬内包ナノカプセルのin vitro での効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、培養用試薬、培養用器具等
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