研究課題
学療法抵抗性を誘導する癌間質細胞のphenotypingを行うために、まず、膵癌切除組織からヒト膵星細胞を樹立した。これまでに当研究室では50株以上作成しており、本年度も10株以上のヒト膵星細胞の樹立を行った。化学抵抗性に関わる癌間質細胞の機能解明を行うことを目的とし、癌間質を形成させるとされている膵星細胞に着目し、膵星細胞が膵癌細胞の悪性形質に促進的に働く際にオートファジーが関わっていることから、膵星細胞のオートファジーに関して検討を行った。膵星細胞との共培養によって増強される膵癌細胞の浸潤能・遊走能は、オートファジー抑制剤(クロロキン)投与によって抑制された。膵星細胞のオートファジーを誘導することで知られる飢餓条件培養やラパマイシン処理だけでなく、膵癌細胞株の上清添加でも正常膵星細胞のLC3-Ⅱの発現は上昇し、オートファジーの誘導が示唆された。Cell lysateおよび培養上清中のCOL1とfibronectinは、これらの処理により発現が上昇し、膵星細胞のオートファジー亢進は細胞外マトリックスの産生および分泌を促進することが示唆された。活性化膵星細胞のマーカーであるαSMAの発現も上昇し、quiescentな膵星細胞の特徴である細胞質の脂肪滴は減少し、膵星細胞が活性化されたことが示唆された。以上の結果より、膵癌細胞によって正常膵星細胞のオートファジーは亢進し、膵星細胞は活性化へと導かれ、化学抵抗性に関わる細胞外マトリックスの産生および分泌を促進することが示された。オートファジー抑制剤は膵癌細胞・膵星細胞を直接の標的とするだけでなく、治療抵抗性に関与する癌間質を同時に制御しうる新しい膵癌治療薬となりうる可能性を明らかにした。
3: やや遅れている
予定通り、膵癌切除組織からヒト膵星細胞の樹立を行った。樹立した膵星細胞をもちいて膵星細胞のオートファジーに関する研究を行った。また、in vitro、in vivo実験により、オートファジー抑制剤(クロロキン)は膵癌細胞・膵星細胞を直接の標的とするだけでなく、治療抵抗性に関与するdesmoplasiaを同時に制御しうる新しい膵癌治療薬となりうる可能性を明らかにした。しかし、化学療法治療抵抗性に与える細胞集団の解析・ナノカプセルの作成は、現在解析している段階であり、やや遅れている。
引き続き、間葉系や内皮性幹細胞のマーカーを用いて、切除組織より樹立した間質細胞集団のprospective isolationを進め、その細胞集団が膵癌細胞の化学療法治療抵抗性に与える効果の解析を進める。さらに、化学療法抵抗性責任癌間質細胞を標的とするナノカプセルの作成を行い、最終的には化学療法抵抗性責任間質細胞を標的とした抗線維化薬内包ナノカプセルのin vitro での効果を検証する
化学療法治療抵抗性に与える細胞集団の解析・ナノカプセルの作成は、現在解析している段階であり、今後研究を進めるため。
培養用試薬、培養用器具、抗体、解析費用など
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Gastroenterology
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10.1053/j.gastro.2017.01.010