研究課題/領域番号 |
15K10190
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長井 一浩 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30304942)
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研究分担者 |
岡本 正人 北里大学, 薬学部, 特任教授 (10243718)
下平 滋隆 信州大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80345751)
黒木 保 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90404219)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / 樹状細胞 / 膵臓癌 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
治癒切除術実施膵臓癌患者を対象として、WT1(Wilms’ Tumor gene 1)ペプチドパルスを行った自家末梢血単球由来樹状細胞による術後アジュバント免疫療法の臨床試験を2015年度に引き続き遂行している。ここで得られた臨床サンプルを用いて、膵臓癌に対する腫瘍免疫に関する解析、とりわけ腫瘍微小環境における免疫関連分子の発現と腫瘍免疫ならびに臨床像との関連を中心に研究を進めている。 生体サイドの免疫学的モニタリングは、診断技術としてのみならず本研究を進める上でのProof of conceptとして重要である。われわれは2015年度より引き続き、WT1テトラマー解析ならびにELISpotアッセイの標準化を確立しこれらの手法を用いて、膵臓癌を含む多様な癌腫における腫瘍免疫のモニタリングを実施した。その結果、多様な癌腫において全体としては65%に腫瘍抗原WT1特異免疫誘導が確認され,より簡便な3種のWT1ペプチド混合ELISpotアッセイ導入後では75%に検出力が高まった。HLA-A*2402適合する改変型WT1ペプチド(WT1-235)の能動免疫の誘導性は明らかに高く,また,WT1テトラマー陽性かつELISpotアッセイ陰性となる割合が,肺がんが53.8%と乳がん90.0%に対して有意に低く,がん種により能動免疫の誘導割合が異なることが判った。 また、腫瘍免疫の生物学的機序の解明とこれを応用した複合的癌免疫療法の開発を視野に置き、前年度に引き続いて、新規バイオマーカーの探索を行っている。末梢血の好中球/リンパ球比率、癌微小環境のCD163陽性M2マクロファージ、CD66b陽性顆粒球の浸潤、血清IL-6が予後不良と、CD20陽性B細胞浸潤が予後良好と高い相関関係がある事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自家末梢血単球由来樹状細胞による術後アジュバント免疫療法の臨床試験は引き続き実施されている。現在、ここから得られた膵臓癌組織ならびに血液等臨床検体を用いて、癌細胞周囲の微小環境に存在する免疫細胞ならびに様々な腫瘍免疫に関わる分子発現を、免疫組織学的手法や分子免疫学的手法を用いて検討している。 このプロセスにおいて、検体のサンプリングと管理は適確順調に実施されており、また生体腫瘍免疫や臨床データのモニタリングと管理および各種解析技術の確立と標準化は完了しており、これらの解析作業が順次進められている状況である。また、腫瘍に対する液性免疫反応の観点から、患者サンプルを用いたイムノコンプレキソーム技術による免疫複合体の網羅的な解析を新たに開始した。 以上より、上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在実施している臨床検体を用いた腫瘍微小環境の腫瘍免疫関連分子発現とその臨床的意義を明らかにするために研究計画に則り各種解析を推進する。科学的解析に必要な症例数や臨床データ、検体の集積を一層図るために、前方視臨床試験の大規模デザインへの更新作業を更に進める。その一環として、従来の長崎大学、信州大学の枠組みに、福島県立医科大学や金沢医科大学を加えた新たなアライアンスの組織化へ向け活動しており、この体制を基盤とした研究の活性化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
従前より保有分の試薬や器具類を繰り越し使用したことから、物品費に充てる額が予定より少額となったため。また、サンプルを一定程度集積した上で纏めて解析を行うという解析作業の進め方であるため、物品の消費が予定よりもある程度抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、集積したサンプルの解析を順次進めてゆく計画であることから、試薬、器具類の使用が促進され、追加購入のための支出も増加するものと考える。さらに、2017年度、本研究計画の目的達成の一翼を担う領域として開始した免疫複合体の網羅的解析等、新規の分析作業を展開してゆくため研究費からの支出を適正に実施、活用してゆく計画である。
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