研究課題/領域番号 |
15K10191
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
近本 亮 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (10419640)
|
研究分担者 |
美馬 浩介 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (00546559)
中川 茂樹 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (10594872)
岡部 弘尚 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40573621)
林 洋光 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80625773)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | EZH2 / DZNep / 胆管癌 / 細胞周期 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
【背景】 EZH2はポリコーム蛋白群の一つであり、ヒストン3リジン27 (H3K27)をトリメチル化することで遺伝子発現を抑制し、癌の進展に関与する事が知られている。特に胆管癌においてはEZH2がp16INK4a、p17KIP1の発現を抑制することで癌細胞の増殖を促進することが報告されている。今回、EZH2阻害剤である3-deazaneplanocin A (DZNep)を用いた薬物的EZH2阻害の効果と、胆管癌治療のキードラッグであるgemcitabineとの併用効果を検証することを目的とした。 【方法】 胆管癌細胞株であるRBE及びTFK-1を用いて、DZNep単独投与及びgemcitabineとDZNep併用における1. EZH2発現抑制効果及びH3K27のトリメチル化の変化、2. 細胞増殖に与える影響、3. 細胞周期及びアポトーシスに与える影響、4. p16INK4a、p17KIP1の発現変化を検討した。 【結果】 胆管癌細胞株において、DZNep単独投与ではDMSO投与群と比して、gemcitabine/DZNep併用ではgemcitabine単独と比して、1. EZH2の発現が低下し、3mH3K27発現の低下も認めた。2.growth assayにて有意な増殖能の低下を認めた。3. Flow cytometer を用いた細胞周期解析の結果、G0/G1分画の増加及びG2/S分画の減少を認め、G1-arrestを認めた。また、Pi/Annexin V二重染色を用いたアポトーシス解析の結果、アポトーシス細胞の増加を認めた。4. 蛋白レベルでのp16INK4a、p17KIP1の発現上昇を認めた。 【結論】DZNep投与によりEZH2発現抑制を介した細胞増殖抑制効果を認め、gemcitabineとの併用において、同様の作用により相乗効果を来すことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、間接的なEZH2阻害剤であるDZNepを用いて薬剤的なEZH2阻害が胆管癌細胞株に与える影響を明らかにした。 次年度は腫瘍のスライスを培養するex-vivo培養系をセットアップし、腫瘍微小環境を含めた癌組織に薬剤が与える影響を検討し、また、EPZ-6438をはじめとする新規EZH2阻害剤を用いた実験を予定している。これらから、実験は概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのDZNepを用いた実験で得られた結果をもとに、選択的EZH2阻害剤であるEPZ-6438を用いた実験を進める。 1.胆管癌細胞株におけるEZH2阻害剤EPZ-6438の効果の評価及び下流の遺伝子変化の確認:EZH2阻害剤の胆管癌における報告は少なく、その効果は未だ明らかでない。胆管癌細胞株を用いてEPZ-6438が癌増殖・浸潤・遊走・血管新生に与える効果及び標的遺伝子の発現変化を評価する事で臨床応用へ向けた第一歩とする。 2.ヒト胆管癌切除検体から得られるTissue sliceを用いた検討(ex vivo) A.EPZ-6438のヒト胆管癌組織における抗腫瘍効果及び標的遺伝子に与える影響の評価:当科においては、細胞株やマウスを用いたin vitro, in vivoの実験のみならず、手術により得られるヒト胆管癌組織が継続的に入手可能である。この手術検体のスライス(Precision cut slice)を用いて薬剤と共にカルチャーする事で、腫瘍微小環境を保持したまま、ヒト検体における薬剤の効果を評価することが可能である。このex vivoの実験系を用いてEPZ-6438を添加した際の抗腫瘍効果、標的遺伝子の発現変化、血管新生に与える影響などを評価する。これによりヒト胆管癌における有用性を評価することができ、臨床応用への足がかりとすることが出来る。 B.抗癌剤及びEZH2阻害剤の効果予測マーカーとしてのEZH2の有用性の検討:同様に腫ex vivoにおいて腫瘍のEZH2発現と抗癌剤(ゲムシタビン)、EPZ-6438の効果を比較することで抗腫瘍薬の効果予測マーカーとしてのEZH2の有用性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
医局内保管の消耗品をしようすることが出来たため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度得られた結果をもとに、新たな阻害剤を用いた実験を進める予定であり、その消耗品購入費に充てる。また、データを管理するための事務補佐員の人件費にも使用する予定である。
|