研究課題
膵癌に対する化学療法はゲムシタビン(Gem)が広く使用されているが,効果は満足のいくものではなく,その理由にはGemに対する耐性化がある.我々はGem耐性の膵癌細胞株(Gem-R)を樹立し,癌幹細胞マーカーのCXCR4の発現が増強していることを見いだした.これをもとに,平成27-28年度にはGem-RはGem感受性株(Gem-S)よりCXCR4発現が亢進していること,さらにGem-RはGem刺激によりさらにCXCR4発現が亢進することを確認した.さらに,Gem-RとGem-Sには増殖能には差を認めなかったが,recombinantまたは線維芽細胞由来CXCL12によりGem-Rは浸潤能がGem-Sに比べて有意に高く,CXCR4阻害薬によって抑制されることを見いだした.平成29年度には,新たに以下の研究を行い成果をあげた.ヌードマウス皮下移植モデルでGem-SとGem-Rの腫瘍増殖能とGem投与による変化を検討した.Gem-SはGemの投与により腫瘍の増大は抑制されるが,Gem-RはGemの投与によりかえって腫瘍が増大するという事実をつきとめた.これは,Gem耐性獲得後にGemを使い続けると,かえって腫瘍をさせるという日常診療でまれに経験する事実と一致した.さらにGem+CXCR4拮抗薬により,Gem-RのGem単独投与による腫瘍増生を抑制し,コントロールより腫瘍をより縮小することを確認した.以上より,in vitroからin vivoにわたり,Gem耐性に伴いCXCR4の発現が亢進し,その制御がGem耐性後膵癌の新規治療薬の標的となるという新しい知見を見いだい,BMC Cancerに論文を発表した.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
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