研究課題
難治性の癌である膵癌は根治切除術を施行してもその予後は極めて不良である。また、その早期診断は困難であり、診断された時点で切除不能例である事も希ではない。そこで新規のスクリーニング法の開発が急務である。本研究では、簡便でかつ診断能の高いスクリーニング法の開発を試みる。5-aminolevrinic acid(5-ALA)は、細胞内に取り込まれると、様々なポルフィリン代謝産物を経てヘムに合成される内因性のアミノ酸である。これらの代謝産物が担癌マウスや癌患者で増加し、尿中や血中に排泄される。そこで、5-ALA投与後の尿中・血中ポルフィリン代謝産物濃度を測定することで膵癌患者に対する新規スクリーニング法の開発を目指し、その有用性について検討する。前年度は大腸癌患者・少数の膵癌症例の尿を測定した。本年度は膵癌患者が少ないこともあり、追加で胃癌患者症例の測定を行った。大腸癌患者では①5-ALA内服前の尿、②5-ALA100mg内服8時間後の尿、③5-ALA300mg内服8時間後の尿についてそれぞれの5-ALA, Uroporphyrinogen I (Uro I), Uroporphyrinogen III (Uro III), Coproporphyrinogen I (Copro I), Coproporphyrinogen III (Copro III)の濃度測定を行った。その結果、ALA内服前の状態で大腸癌症例の尿中ALAがコントロールと比較し、有意に高値であった。100mg、300mg内服後の尿中Uro Iが大腸癌群で有意に高値であり、300mg内服で、尿中Copro IIIが大腸癌群で有意に高値であった。胃癌患者・膵癌患者ともALA内服無しの状態で尿中の5-ALA濃度が高く、スクリーニングに用いることができる可能性がある。しかし、代謝産物では大腸癌と違い有意な結果が得られず、次年度も引き続き症例を増やして検討を加える必要がある。
2: おおむね順調に進展している
本年度は症例集積の少ない膵癌患者の尿中5-ALAの代謝産物の測定とともに胃癌患者29例について検討を加えた。測定内容として①5-ALA内服前の尿、②5-ALA100mg内服8時間後の尿、③5-ALA300mg内服8時間後の尿についてそれぞれの5-ALA, Uroporphyrinogen I (Uro I), Uroporphyrinogen III (Uro III), Coproporphyrinogen I (Copro I), Coproporphyrinogen III (Copro III)の濃度測定を行った。その結果、①ALA内服なし群の胃癌患者で尿中のALA濃度が有意に高く、Uro I、UroIII、Copro I、Copro IIIでは有意差を認めなかった。②ALA100mg内服群の尿中ALA濃度は胃癌症例が有意に高く、その他の結果は有意差を認めなかったもののUro Iで高い傾向を認めた。③ALA300mg内服群で、胃癌患者の尿中ALA濃度はコントロールより有意に高値であった。その他の測定項目に有意差を認めなかった。Stage別でも有意差は認めなかった。大腸癌とは異なる結果となったため、引く続き症例集積ならびに膵癌患者でも測定を継続する。
平成28年度も膵癌症例の症例集積が少ないものの、胃癌症例で検討を行えたため、概ね予定通り研究を進めることができた。平成29年度は膵癌症例の検討項目を少なくすることでさらに症例を集積し、測定内容を検討する。
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Anticancer Research
巻: 36(5) ページ: 2445-2450
巻: 36(9) ページ: 4569-4574
10.21873/anticanres.11005