研究課題
肝胆膵癌においてERCPや術中に採取した胆汁のレドックス動態、脂質過酸化物等を測定するとともに患者(印刷業含む)胆汁中の細胞外小胞中のmiRNAを解析しこれらを組み合わせることによって独自の早期診断マーカーを探索し、予後不良の胆管癌の減少に貢献することを目的とする。初年度は、印刷従事者胆管癌4例、印刷業以外の肝胆膵癌43例、非担癌症例14例から採取した胆汁について酸化還元動態、変異原性試験、胆汁酸組成を検討した。印刷業事業者とそれ以外の胆管癌をHPLC法により電気化学検出器(クーロケム)で検出した結果を比較すると印刷業で酸化型グルタチオンの割合が高く、組成では二次胆汁酸が多いことが判明した。印刷業の胆管癌は発癌時点ではすでに有機溶剤暴露中止から長期間経過しているため薬剤の影響は考えにくく、病理組織像を勘案すると薬剤により過去に惹起された胆管炎の遷延化を反映した結果と考えられた。全症例において変異原性試験は陰性であった。胆道癌症例及び非胆道癌症例より術中に採取した胆汁を用いてエクソソームの回収を試みた。胆汁中のmiRNAは微量であり通常のRNAシークエンサー法では困難であった。現在、胆汁250μlをシステムバイオサイエンス社のExoQuick Exosome Precipitation Solutionを用いてExosomeの精製を行った。得られたExosome分画をカンタムデザイン社NanoSightを用いて、粒子の分散・凝集の確認、経時観察による安定性の確認、そして形状の判断を行った。その結果、正常者、肝胆癌患者いずれの胆汁からも粒子径が120 nm前後で、1 X e^12 個/mlの粒子が得られExosomeが精製できたと判断した。次に、これらExosome分画からのmiRNAの分離を試みたが現在のところ収量が低く別の手段を講じることを検討している。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度予定していた肝胆膵担癌患者における胆汁のレドックス動態をHPLCーECDで解析は概ね順調に集積でき、解析もできている。印刷業従事者を含む胆道癌症例及び非担癌症例ともに変異原性試験を施行したが、UMU試験の結果全例陰性であった。胆道癌の新たなバイオマーカーを検出するための胆汁中のエクソソームの解析は、予想された通りごく微量であるためその精製は困難であったが、やっとその手法を確立できた。現在、エクソソーム中のmiRNAの分離を試みている。
当初予定した胆道癌の特異性の高いバイオマーカーを検出するために考案した胆汁を用いた解析法のうち、酸化ストレス関連の検討ならびに変異原性試験については順当に終了しつつある。胆汁中のmiRNAの解析に関して従来困難であった胆汁中のエクソソームの精製法を確立したので、エクソソーム分画からのmiRNAの収量を高める手法を考案、得られたmiRNAプロファイルより胆道癌特異的な変動を見いだしたい。
物品費で翌年度への繰り越しが生じた理由として研究計画の一部において解析のための条件検討に時間がかかったため必要な試薬の発注が遅れたためです。
現在、上記研究計画の一部における解析方法の確立ができたため、本年度には多数例の検討を必要とするため消耗品費が増加するため、予定通りすべての物品費が必要となる予定です。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
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