研究実績の概要 |
胆道癌と肝内胆管癌は胆道上皮の慢性炎症を背景に発生することより,従来の腫瘍マーカーによる早期診断には限界がある.我々は胆管癌に特異的な糖蛋白質マーカー(WFA-positive sialyl-MUC1:以下WFA)を見出し,高感度な測定系を構築した.今回はWFAの臨床的意義を検討した. 胆道癌243(肝門部117,中下部71,胆嚢55),肝内胆管癌58,良性胆道疾患287および対照46の各症例より収集された血清と胆汁におけるWFAを測定し,部位,進行度,組織型との関連性を検討した. 血清:WFAの濃度(nl/well, median, range)は,肝門部癌(346, 131-1910),中下部癌(252, 121-804),胆嚢癌(326, 56-2000),肝内胆管癌(505, 103-2000)の各癌腫において,良性胆道疾患(123, 25-595),対照(90, 0.6-230)に比して有意に高値であった.部位では肝内胆管癌が高値であった.進行度,組織型においては有意な差を認めなかった.良性胆道疾患,胆道癌および肝内胆管癌を対象にROC解析による診断能力を比較したところ,WFAはCA19-9, CEAに対して優位性を示した.胆汁:WFAの濃度(nl/well, median, range)は,肝門部癌(24, 10-653),中下部癌(29, 10-533),胆嚢癌(25, 11-341),肝内胆管癌(60, 25-432)の各癌腫において,良性胆道疾患(7.4, 0.3-45)に比して有意に高値であった.また,胆汁細胞診(class IIIb以上)の診断感度64%に対して,WFA(>cut-off 13.5)の感度は86%と優位性を示した. WFAの測定は今後の胆道癌診療において有用であると考えられた.
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