研究課題
急性胆道炎は適切な抗菌薬治療が行われないと致死的となり得る急性感染症である.また,世界的にも抗菌薬耐性菌の蔓延は問題となっており,今後は経験的抗菌薬療法における抗菌薬の選択が困難となる可能性がある.われわれは胆汁細菌におけるメタゲノム解析を行い病原体同定に関する研究を立案し,平成27~29年度に研究を行った.過去3年間で50例以上の急性胆道炎症例におけるメタゲノム解析を施行した.いずれの症例も研究計画書通りに診断し,重症度を評価した後にインフォームドコンセントを行い,検体を取得した.全症例とも胆汁検体の他に唾液,便のサンプルも集積し解析を行った.いずれの検体も24時間で起因菌の同定が網羅的に検出可能であった.また,耐性菌の遺伝子型を含めた耐性状況はさらに24時間(合計48時間)で検出可能であった.通常,細菌培養検査から抗菌薬感受性結果を得るのに5日程度必要であった検査過程を48時間に短縮することが可能であった.この検査手法は将来的に抗菌薬治療を画期的に変革するような基礎研究であると考えられた.本年度は最初の6例に関するまとめが掲載された(Kujiraoka M, Front Microbiol).その後に50例以上の症例集積の結果を解析し,学会発表を複数行った.現在,その結果に関する論文を作成中であり,近日中に投稿予定である.50例以上の解析結果では,細菌同定に関しては100%一致可能であった.また,興味深い点として,今回の解析では5%程度にESBL(extended spectrum β-lactamase)産生菌がキャリアーとして存在していた.ESBLは通常用いられるβラクタム系抗菌薬には効果がないので,国内のESBLキャリアーの状態を把握するうえでも重要な研究であったと考えた.本研究結果をもとに,今後はより簡便な細菌同定システムの開発を行っていく予定である.
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Frontiers in Microbiology
巻: - ページ: -
10.3389/fmicb.2017.00685.
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