研究課題
膵癌は、最も予後不良の疾患の一つであり、早急かつ効果的な対策を要する。本研究では、膵癌の治療ターゲットとして新たな癌細胞増殖かつ走化性惹起作用をもつ血清因子を探索・同定すること、また、癌細胞株(in vitro)、動物実験(in vivo)においてこのような因子が働くことを証明することを目的としている。本年度は、走化性惹起作用をもつ血清因子を同定し、さらにその因子を抑制することで癌細胞の動きを制御する可能性を探った。研究期間を通して血清因子について各種分離カラム等を用いて分離し同定することを試みていたが、親水性の分画および疎水性の分画に走化性惹起作用のある分画を得た。このうち、親水性分画について、メタボローム解析により網羅的に解析したところ、24種類の分子についてコントロールサンプル(走化性惹起の無い血清)と比べて過剰に含まれることを見出した。また、炎症組織で産生されるS100タンパク質が癌転移促進に働いていることも見出した。さらに、癌細胞株の走化性アッセイを用いて、数百種類の化合物のライブラリーから、上記と同じ血清に対する走化性を阻害する物質を少なくとも4個見出した。この化合物は、同じ膵癌細胞株を移植した担癌ヌードマウスを用いた実験で抗腫瘍効果があることを見出した。これらの化合物については特許を出願した(特願2018-059074)。更なる動物実験にて抗腫瘍効果を検証していきたい。膵癌患者の血清中にこのような走化性惹起因子が存在するか否かについては検討を完了していない。ヒトサンプルを用いた証明については引き続きの課題である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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