研究課題
本研究は、がん遺伝子の中でも最も重要な転写因子であるc-mycの膵癌における臨床意義を解明することである。まずテトラサイクリン系発現調節ベクターを膵癌細胞株に導入し、c-mycの発現量によって細胞がどのように変化をするかを確認した。テトラサイクリンの濃度を調節しc-mycの発現量を2-3倍程度に調節すると、細胞はspindle likeに変化し、spheroid形成能や造腫瘍能の増加を認めた。一方で、発現を5倍以上に調節すると増殖能は極端に低下し、bcl-2などの発現が上昇し、細胞はapoptosisに陥ることが分かった。次に臨床サンプルのc-myc発現について検討した。根治切除(R0)を施行した膵癌症例65例(術前化学放射線治療施行42例を含む)の切除標本の癌部分のc-myc発現と予後について検討した。C-myc強発現群は36例で、低発現群は29例であった。両群間で腫瘍の進行度など患者背景に有意差を認めなかった。C-myc強発現群の5年生存率は26.7%であり、低発現群(67.6%)に比べて有意に低かった(p<0.001)。5年無再発生存率もc-myc強発現群は低発現群に比べ有意に低かった(21.4% vs 54.8%、p=0.003)。また術前化学放射線治療を施行した42例において術前治療の組織学的効果(Evans分類)とc-mycの発現量を検討したが、組織学的効果とc-myc発現には有意な相関を認めなかった。これはc-myc発現陽性細胞が治療に抵抗性を示すためと思われた。以上より、膵癌においてc-mycが癌幹細胞に関連する可能性があり、腫瘍内で高発現している症例は治療抵抗性を示し、予後不良である可能性が示唆された、今後さらに症例数を増やして検討するとともに、c-mycの下流のsignalingを検討し、治療のtargetとなる分子を検索していく予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件)
Surg Today
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1007/s00595-018-1644-9
Mol Clin Oncol
巻: 8(3) ページ: 434-440
doi: 10.3892/mco.2018.1546
Surg Laparosc Endosc Percutan Tech.
巻: 28(2) ページ: 90-95
doi: 10.1097/SLE.0000000000000510
Gastrointest Tumors
巻: 3(3-4) ページ: 141-152
doi: 10.1159/000455955
Anticancer Res.
巻: 37(6) ページ: 3053-3059
Eur J Surg Oncol
巻: 43(6) ページ: 1061-1067
doi: 10.1016/j.ejso.2017.03.015
Surg Case Rep
巻: 3(1) ページ: 51
doi: 10.1186/s40792-017-0326-y
Surg Today.
巻: 47(10) ページ: 1201-1207
doi: 10.1007/s00595-017-1509-7
Eur J Surg Oncol.
巻: 43(4) ページ: 763-771
doi: 10.1016/j.ejso.2016.12.008.
Ann Surg Oncol.
巻: 24(4) ページ: 983-989
doi: 10.1245/s10434-016-5660-y.
Surg Endosc
巻: 31(7) ページ: 3056-3060
doi: 10.1007/s00464-016-5303-1