研究課題
心筋梗塞後や開心術後の心筋虚血再灌流障害は予後を左右する重要な因子である。ANP (Atrial Natriuretic Peptide: 心房性ナトリウム利尿ペプチド)の心筋保護効果に関しては近年種々の報告がある。一方で、PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ: ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)のアゴニストが心筋虚血再灌流障害抑制効果を持つことが知られてきている。ANPが心筋細胞内でPPARγを誘導するシステムがあるかどうかを明らかにするために、ブタ心筋虚血再灌流モデルを作成し、ANP製剤であるカルペリチド(human atrial natriuretic peptide: hANP)の投与の有無により2群に分けて検討した。心筋虚血再灌流の過程を通して、血行動態や生化学指標の測定の他、心機能の主な指標として左室圧波形を微分して得られるdP/dTを測定した。そして、再灌流終了後に、心筋3領域 (虚血域、虚血周辺域、非虚血域) のPPARγ mRNA、PPARγ蛋白の定量を行った。その結果、hANP投与群のPPARγ mRNA発現は虚血域において有意に高く、同部位のPPARγ蛋白発現もhANP投与群で有意に高かった。しかし、再灌流終了時のdP/dTの値に有意な差はみられず、再灌流中の心筋逸脱酵素のピーク値にも群間の差がみられなかった。本研究により、ANP投与による心筋虚血再灌流後急性期の血行動態上の心保護効果を確認することはできなかったが、ANPが心筋虚血再灌流障害後の心筋細胞内のPPAR γ の発現に対して保護効果を有することが示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Gen Thorac Cardiovasc Surg
巻: 65 ページ: 85-95