研究課題/領域番号 |
15K10209
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪口 仁寿 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40743026)
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研究分担者 |
池田 義 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40281092)
南方 謙二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60539675)
杉山 篤 東邦大学, 医学部, 教授 (60242632)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心筋疾患外科学 / iPS細胞 / 心筋梗塞 / 重症心不全 / 致死的不整脈 / ホルター心電図 / プログラム電気刺激 / マイクロミニピッグ |
研究実績の概要 |
1.ミニブタ心筋梗塞モデルを用いたiPS細胞由来心臓構成細胞移植による不整脈評価実験 マイクロミニピッグの左冠動脈前下行枝第2対角枝分岐部末梢にて2重結紮を行い心筋梗塞を作製した。2週間後に再開胸し、iPS細胞由来心臓組織シートを4枚、梗塞部位とその周囲を全て覆うように移植した移植したシートに対する拒絶反応を抑制するために、術前3日から術後56日までタクロリムス0.1㎎/㎏を投与した。心エコーで移植後8週において、左室内径短縮率は偽手術群と比較し、有意に改善を認めた。ホルター心電図にて偽手術群は2例の個体で致死的不整脈の一つである心室頻拍(VT)の出現を認めたが、シート移植群はすべての個体でVTの出現はなかった。致死的不整脈発生のサロゲートマーカーである1心拍毎のQT間隔のばらつきを定量化(STV)し、比較したところ、1週後のSTVは偽手術群と比較し、シート移植群にて有意に低かった。またプログラム電気刺激(心室頻回刺激法)を行い、致死的不整脈誘発の有無を評価したところ、偽手術群2例、シート移植群2例にてVTが誘発された(有意差なし)。以上により、ヒトiPS細胞由来心臓組織シートは、不整脈リスクを増大させることなく、ブタ心筋梗塞モデルの心機能を回復させたことを示した。iPS細胞を用いた心臓再生治療の安全性をヒトに近い心拍数をもつミニブタの心筋梗塞モデルを用いて電気生理学的評価を行い、安全性の一端を示すことができた。 2.iPS細胞由来心筋細胞の成熟化メカニズム解析(in vitro) ヒトiPS細胞から誘導した心筋細胞と間質細胞をそれぞれ混合してシート化したのち、細胞外他電極電位測定装置を用いて不整脈解析を行ったところ、臨床的にQT延長を示すE-4031の高濃度負荷にて、一定以下の心筋細胞の割合のシートでよりリエントリ型不整脈が多発することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初ミニピッグ心筋梗塞モデル作製に難渋したが、作製方法を改良し心筋梗塞作製時の死亡例を無くすことに成功した為、統計解析可能な数量の個体の実験を完遂することができ、初年度にて国際学会にてその成果を発表することができた。また、in vitroでのシート化による不整脈メカニズム解析についても進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験により、ヒトiPS細胞由来心臓組織シートが不整脈を誘発する可能性が著しく低いことが示された。しかしこのシートは単層であり、移植後8週においてはほとんど残存していなかった。 我々は最近このシートの積層化に成功した為、この新たなシートを用いて同様にミニブタ心筋梗塞モデルを用いて、心機能改善と同時に催不整脈性がないことを示したい。 移植後の拒絶反応も生着率の悪化の一因である為、免疫抑制剤をタクロリムス単剤から作用機序の異なる3剤に増やし、実験を開始している。 これらの変更により、より直接的な、組織的、物理的な効果により心機能を改善せしめることが期待できるとともに、シート存在時における催不整脈作用の有無をより明確に示すことができると考える。
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